番外編と短編の本棚

□涙の雫
1ページ/1ページ

どしゃぶりの中で立つ君に
そっと近づいてみた
雨と同化していても
僕には分かる
君が泣いていること
人形のように感情を失った瞳
不安になるほど白すぎる肌
なぜ気づかなかったんだ
君がこんなにも
苦しんでいることを
傘を放り投げ
君を胸に抱き寄せる
冷たく濡れた君からの
激しい震えが僕を揺さぶる
どうして…と
震える唇からこぼれる問いに
抱く指が白くなるほど強く
壊れそうなほど細い身体を
僕は強く抱きしめる
涙のような雨の雫が
僕らを冷たく包み込んだ
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ