ディセンダーの本棚

□明日へ続く物語〜第一章〜
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 閉じていた目を開けると、そこは知らない場所だった。見たことのない形や色の植物ばかりが周りを囲んでいて、どこか不気味ささえ感じる。そこで足元を見るが、先程まではそこにいたはずの、翡翠色の瞳の子犬はいなかった。

「・・・ここはどこ?」

 とりあえず歩いてみることにした私は、どこを見ても記憶にないものばかりに不安ばかりが胸を占める。肩にかけていたカバンを開け、携帯を取り出し、警察にかけてみることにした。しかし、返ってきたのは「電波がつながりません」の無機質な電子音声のみだった。ため息をついていると、私の目の前にある草むらがガサリ、と音を立て、そこに目を向けた瞬間、私は必死に走り始めた。

「な・・・に、あれ!?」

 ありえない。草むらから出てきたのは、私の知ってる蜂に似ているが、その大きさは数倍以上ある化け物だった。

「・・・あ、ぐっ!?」

 走っていた私の左肩と背中が突然、激痛に覆われ身体を支えきれず、走った勢いのまま私は地面に倒れこむ。左肩を見ると、大きなトゲのようなものが深く刺さっていた。震える手でそれをつかみ、力まかせに引きぬく。 一瞬、あまりの痛みに意識が飛んでいた。今度は背中に刺さっているトゲを引き抜いた。抜いたものを投げ捨てると、先程の蜂の化け物が少し離れたところにいた。あのトゲはあの化け物のものだろう。逃げないと、と思うが、なぜか身体が動かない。痛みだけでなく、身体全体がしびれていて、指一本動かせない。いつの間にか数が増えていた化け物が、一斉に近づいてくる。ああ、私死ぬのかな。痛みと恐怖で占めた頭の隅っこで思い、静かに目を閉じる。

ザンっ!!

「・・・?」

 しかし、いつまで待っても身体に変化はない。ただ、何かを切り裂く鋭い音と、何かが地面に落ちる音がした。

「オイ!大丈夫か!?」

 人の声が聞こえ、ゆっくりと瞳を開けた。そこにいたのは、赤い髪に茶色く焼けた肌の少年だった。その横には少年が倒したのだろう、化け物がバラバラになっていた。

「う・・・」

「うわっ・・・と!」

 助かったのか、と私は息をこぼす。だが、急に視界が揺れ、気づくと私の身体は少年に支えられていた。

「大丈夫か、しっかりしろ!」

 少年の切羽つまった声を最後に、私の意識は闇に沈んでいった。



〜まだ理解できない〜
 (ここはどこ?)    (これからどうなるの?) (まだ物語は始まったばかり)
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