...予告...



これは、若井有子が訪れてから
ほんの少しの経った頃のお話。

吉都アパートで起きた
ひとつの事件。



「大家さん」

「ん〜」

「皆さん、一体どうしたんですか?」

「なにがあ?」

「彼のことです。
あんなに大騒ぎになるなんて」

「俺様の口からじゃなくて、
彼の口から直接聞いてみなぁ」

「分かりました。でも、ひとつは
大家さんに答えて頂きたいです」

「なにい?」

「吉都アパートの皆さんは、
彼の事情を知っているんですか?」

「有子ちゃん以外は、知ってるねぇ」



全ては、
ひとつの"秘密"から始まった。


抱えるものは
決して誰にも言えない
友に託された悪の秘境。
そしてその秘境は、
人を束縛する。

その束縛は温かくも、
どこか独りぼっちの偽りの楽園。
それは永遠に人を閉じ込めるような、
固い錠で出来たもの。



「うちだって力になりたいです。
なのに、うちは何も知らないです」



「もう聞いたんだろ。吉都アパートの
……いや、大家さん辺りに」



「いいんだ。
今まで隠してたのが悪いんだから」



その言葉の後に続く真実は、
後に有子と吉都アパートの住人の
心を繋ぎ止める。
 

*****


若井有子は、創南大学で
ひとつの作品を創作することとなった。


彼女の夢は
小さな展覧会を開くこと。
そしてそこに、自分の大好きな
"サンドアート"を飾る。

それは彼女にとって
初めての大きな挑戦。



「完成したらすっごいキレイかもね!
市花も応援するよ〜!」

「ありがとう。市花ちゃんも頑張って!」



友人の笑顔に背を押され、
有子は夢への第一歩を踏み出した。
そして努力を重ねていく。


−−そんな彼女は、なりゆきで
ある場所へと訪れることになる。
そこは古き歴史の深い
小さくも偉大な寺。

そこで過ごす日々に
有子は何かに気付き始める。
その何かは彼女を育てる
重要な存在だったのかもしれない。



「さあ。
ここに来たからには、
してもらわなくてはいけませんわよ」

「何をですか?」

「まあそんな大変ことではありません。
軽く炊事洗濯掃除その他諸々
していただければ文句ありませんわ」

「要は雑用ですか、あのー……」



拝啓、お父さんお母さん。
都会の人は
こんなにも厳しいものでしょうか?
 

*****


この物語の始まりを知る人物が、
ただひとり ここにいる。



「おい、起きろー。
そんなにへばってんのは
体のせいじゃないでしょ?」

「…………」

「ったく〜。
気持ちは分かるぜぇ。
でも
心が折れて体も折れるなんて
迷惑な話だなあ」

「うるさいなあ」

「ははは」



その笑顔は笑顔ではない。
目が一度だって
笑ったことがないからだ。



「確か人が欲しい
とか言ってたよなぁ」

「えぇ、そうね。
二人くらい欲しいですわね」

「へえ。
それじゃあ、俺様が二人
紹介する」

「本当?
どんな人なのですの?」

「それは会ってからのお楽しみねえ」



その言葉から出た声は
楽しそうに言い切った。
しかし、
決して心から楽しんだ
言葉ではなかった。
 

*****


−−彼の中に隠された秘境と錠。
その人の持つ真実とは
一体なんなのか。


−−有子の持つ夢、
そして多大の努力と労力の先に
あるものとは。


−−そして、
ひとりの人物から始まった
物語の行く末は。



全ては彼のみが知っている。



けぬ寂漠の楽園.






※※※
この予告はあくまでも
仮の内容です。
一部内容変更・台詞変更は
あると思いますのでご注意下さい。


>>>20100830.


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