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□バレンタインですね
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「…今日何日だっけな」
やべぇやべぇ日にち感覚狂ってきてる。
そんな風に思いながら、零崎は、雪の積もった道をさくさく歩く。
あー、そんな事より、さみぃ。
そう、呟いた気がした。
「…あー、…あれ?」
何故か、ふっと。
脈絡もなく。
あの欠陥製品の事を思い出した。
「…いや、マジなんでだよ」
思わず、自分で自分に突っ込み。
なんでここで。
彼の事等を。
なんか、これって。 
[告白したけど振られた先輩を久々に思い出した後輩]って状況とそっくりじゃん。
「…うわー、オレ恥ずかしい奴じゃん」
正直な気持ちを言ったのに。
違和感は消えなかった。
なんだろう、これ。
そう、まるで。
向こうの誰かが居なくなった、みたいな。
…あれ?
あれれ?
「じゃオレはあいつを心配してんのか?」
とは言ってみたが、すぐに自分でそれを否定した。
いやいや。
それだけはねぇだろ。
だって、鏡合わせなんだぞ?
心配なんてしなくたっていいのに!
今、顔がすげぇ熱いけど!
心臓も煩いけど!
気のせいに違いない!
「…あ」
と。
声が漏れた。
その視線の先には。
[特売!]などの売り文句の幟や、
派手な装飾と共に置かれた、様々なチョコの山。
「…もう、バレンタイン、なんだ…」
てことは、二月十四日ぐらいか。
よし、日にち確認終了。
また、何となく彼の事を考えた。
その後、財布の中を覗き込む。
百円玉が六つ。
十円玉が四つ。
「…あいつのところ、行ってみよ」
そう独り言を言っただけで。
何故か少し安心した。
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