Book.

□行こうよ。
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その大佐を見た時、オレは信じられなかった。
目の奥の、オレが大好きだった、あの輝き。
それが、いまでは失われていて。
彼自身も。
無表情で、
今にも儚く消えてしまいそうで、
ただそれが怖くて、
「たいさ、」
オレは、思い切って話しかけてみた。
―――――エドワード君、よく、聞いて
中尉の言葉は、まだついさっき聞いたばかりだった。
オレには。
まだまだ、ガキなオレには、
正直、重い話だった。
―――――大佐は、視力を
大佐からの返事は、来ない。
目は虚ろにその辺を彷徨うだけ。
手は、発火布をはめたまま、放ってある。
錬成陣は掻き消えていた。
―――――もって、いかれたわ
ざぁ、と少し強い風が吹いた。
大佐は、まだ言葉を返してくれない。
辺りは、瓦礫しかなく。
まるで、
オレと大佐だけ、置いていかれたみたいだった。
なにもかもに。
“約束の日”にも。
人造人間にも。
そして、戦いにも。
置き去りに、された気分で。
オレは、まだ大佐の返事を待っていた。
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