p u y o

□カレーライスとキミとボク
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何種類もの香辛料がお互いを邪魔することも打ち消し合うことなく、すべての食材を上手く引き立て、野菜の甘味、肉の旨味が絶妙にマッチしている。

舌に走るぴりっとした刺激、
鼻を抜けるスパイシーな香り。

そして喉を通りすぎた後の満足感、また口に運びたくなる中毒性。


これは。



ボクとシェゾに限って以心伝心を感じるなんてことはほとんどないんだけど

この時ばかりはそれを感じずにはいられなかった。


ボクたちの間に、言葉はない。


あまりの美味しさに、言葉を発せないのだ。



まさか、美味しくなるなんて。



事の発端は、「プリンプに来てからカレーあんまり食べなくなったね」というボクのひとこと。

シェゾがたまには俺が作ろうか、なんて珍しくデレた。

せっかくだから、カレーをシェゾに頼んでみたのだけど・・・
スパイスの種類も量も少ない。こどもか。


それをどことな〜く遠回しに指摘したら…まあ、だいたいわかると思うんだけど…。


「気にくわなきゃお前で勝手に作れ。俺は激甘が好きなんだ、激甘じゃないと食わねえ作らねえ。」


ふてぶてしいにもほどがある。


だからボクはもちろんボク好みの、それも一口食べた途端に水を飲みたくなるようなちょーから〜い激辛カレーを作った。


一方シェゾはというと
りんごやハチミツを隠し味にした上、ヨーグルトやチョコまで入れた激甘カレー。

全く、聞いただけで吐き気がするよ。


そう、ここでボクはちょっとしたいたずらを思いついた。


「シェゾ、さっきはごめんね!ボクがよそってあげるからさ、一緒に食べよ?」


ボクはちょっと困ったように笑って見せた。シェゾがこれに弱いのは知ってる。


「別に、わかったならいい。早くよそれ。」



うん、すぐやる。と答え、
計画を実行へと移す。

シェゾのカレーと、ボクのカレーを半々にかける。
色が明らかに違うので一度別の容器で混ぜてから。


にやけを抑えつつ、
シェゾにカレーを出す。

どんな味か気になるから、もちろんボクも同じカレー。



シェゾが先に食うぞ、と一口。
ボクもすぐに席に着き、一口。



そして、冒頭に戻るわけ。





先に口を開いたのはシェゾだった。

「俺は激甘カレーを作ったはずだ、刺激があるようなスパイスは加えていない。」


「いや、シェゾにいたずらしようとして…ボクのカレーを半分入れた。それにしてもこんなに美味しくなるなんて……」


「お前そんなことをっ!人のカレーに手を加えるなんて最低だな!」

あ、怒っちゃった。


「…だが」


「なに」


「…めちゃくちゃ美味い。」


シェゾがそういうのも頷ける。
本当に、このカレーは美味しかった。



「じゃあ……許して?」







次は、彼にこの困り笑顔は効くのだろうか。



まだこれが効くうちは
一緒にカレーが食べたいな。







fin.
.
 

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