Long Story

□其の四(3/3)
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懴罪宮 東側

や「ねー剣ちゃん。敵、さがしに行かないの?」

剣「ああ……無暗に探し回ってもどうせ迷うだけだからな。奴の目的がここにある限り必ず現れる。なら、ここで待とうじゃねえか」

や「…うん!」

やちるが頷いたのと同時に、息を切らして現れたのは愛胡であった。

愛胡「…いた!剣八さん…!」

や「あ!あんこ!」

剣「………」

剣八は一瞬愛胡に目をやったがすぐに通路へ視線を戻した。

愛胡「あの……さっきは、ごめんなさい…私…」

剣「…なんで謝る」

愛胡「え?だって…」

剣「…謝らねえといけねえなァ、俺の方だ」

愛胡「え…」

剣「…少しイラついてたもんでな……言い過ぎた…」

愛胡「剣八さん…」

剣「…悪かったな…」

愛胡「いえ……私の方こそ、剣八さんがいるのに、一角さんとあんな…」

剣八は言い終わる前に愛胡の腕を掴み、自らの膝の上に引き倒した。
そのまま頭にポン、と手を置くと漸く状況を理解した彼女は顔を真っ赤に染めた。

愛胡「け、けけけ剣八さ…っ!?」

剣「…さっきのことは忘れろ。おめえは、俺の側に居りゃあそれでいい」

愛胡「っ…は、い…」

や「わーっ!あんこ顔真っ赤っかーっ!!」

愛胡「っっ!?や、やちるさ…っきゃ…!!」

剣「危ねえっ!!」

思っていたよりもすんなり仲直りできて、愛胡は柔らかく笑った。
その瞬間、やちるが現れた為に驚いた愛胡はバランスを崩し、落ちそうになった。
咄嗟に剣八が腕を伸ばした為、結果的に落ちはしなかったのだが。

剣「大丈夫か」

愛胡「は、はい……ありがとうございます…」

や「ごめんねえ?あんこー」

愛胡「いえ……大丈夫ですから、気になさらないでください」

や「ありがとーっ!あんこ大好きっ!!」

やちるが愛胡に飛びついた、その時であった。3人は近くに4つの霊圧を感じたのである。

剣「…やっと来やがったか」

階段

岩「くっ…それにしても長え階段だな…!何段あんだチクショウ!!」

一「ゴチャゴチャうるせえぞ!もうすぐてっぺんだ!!」

紬「!…この霊圧は…」

剣「…さて、どいつだ…」

階段を登り終えた直後、馬鹿でかい剣八の霊圧を感じたのは、紬と一護が同時だった。
見つかる前に、と暫く走ると剣八の霊圧に当てられ続けた花太郎は、体に力が入らずその場に転んだ。

紬「山太郎!」

花「す…すいませ…体に…力が…」

岩「…まったく、世話の焼ける……野郎だなオイ!!」

花「うわあ!?」

動くことのできない花太郎を岩鷲が担ぐと、すかさず紬が文句を言う。

紬「あ!てめえ!山太郎はもっと大事に扱え!!」

岩「うっせえ!んなこと言ってる場合じゃねえだろうが!!」

紬「ああ!?んだコラ!山太郎はあたしの嫁だ!!」

岩「お前女だろうが!嫁とかじゃねえだろ!!」

一「いいから走れよ!てめえら!!」

紬「チッ……ぜってえ山太郎に傷つけんじゃねえぞ!!」

岩「わかってらあ!!」

一護が怒鳴ったことで状況を思い出した2人は、文句を口にしながらも走り出した。

と、その時だった。

剣「…お前か?」

一「!!」

一護がものすごい勢いで振り返った。

剣「…どうした。いつまでそっちを見てやがる」

一「!?」

振り返った一護が剣八の姿を捉えた次の瞬間には、剣八は一護のすぐ後ろに立っていた。

その後ろには、少し俯き加減な愛胡が立っている。

紬「あ!愛胡ーっ!!」

愛胡「え……紬!?」

一「!おい…!」

ブンブンという音が聞こえそうなくらい手を振ると、愛胡に向かって、まるで突進するかの如く紬は飛びついた。

そんなやり取りが行われている余所で、一護達は至近距離から霊圧を当てられている為か、そこから一歩も動けずにいた。

紬「愛胡だーっ!本物だーっ!なんかすっっげえ久々に感じるーっ!!」

や「あー!つむぎん!あたしもギューってしてーっ!!」

愛胡「ふふ……紬、この間まで謹慎中だったもんね。それより、なんで紬が旅禍と…?」

紬「あー、それはねえ…」

剣「うるせえぞてめえら!騒ぐならどっか別のとこ行きやがれ!!」

そう言われて3人は渋々黙った。

剣「チッ……黒崎一護だな?」

一「!…なんで俺の名前……てめえ一体…」

剣「なんだ……一角から聞いてんじゃねえのか」

一「一角?…!」

剣「十一番隊隊長、更木剣八だ。てめえと、殺し合いに来た」

さすがに隊長格か…。

口角を上げながら名前を名乗った剣八の霊圧に、一護はうろたえていた。
いつまでたっても何もしてこない一護に、痺れを切らしたのか剣八は声を掛けた。

剣「…言ってんだぜ?俺は、てめえと殺し合いに来た、ってな。なんの返事もねえってことは、始めちまっていいのか?」

そういう剣八に対し、一護が斬魄刀に手を伸ばした瞬間、岩鷲は膝をついた。
花太郎に至っては、既にその場に倒れ、息も絶え絶えな状態であった。

一「…花太郎…!!」

岩「バ……バカ野郎、一護…!俺も花もちょっと霊圧にアテられただけだ……かまうんじゃねえ…!
俺らのことはいいから前向いてろ…!キョロキョロしてっと、あっという間に殺られちまうぞ…!」

一「…岩…」

や「あーっ!ヨダレー!!」

いつの間に背中に上がっていたのか、やちるが剣八の後ろから顔を出した。
一護が驚いて振り返った時には、既に一護の肩の上へと移動していた。

や「わあ、よっぽど剣ちゃんが怖かったんだねえ!かわいそー!」

一「くそっ…!」

一護が振り払うより一瞬早く、やちるは剣八の前へ戻っていた。

や「…おこられちった…」

剣「バカ。おめえが悪い」

紬「つーか、こんな奴の霊圧にアテられたぐれえでなっさけねえなあ」

愛胡「紬…!」

剣「ああ?てめえ俺に敗けたクセに何言ってやがる」

紬「カッチーン!!あたしがいつアンタに敗けたって!?てか、そもそも敗けたのはアンタの方だろ!」

剣「ああ!?なんだとてめえ!なんなら、ここでもういっぺん勝負するか?」

紬「上等だコラ!!てめえのその自信、完膚なきまでに潰してやらあ!!」

愛胡「ちょ、ちょっと2人とも…!」

愛胡が止めに入ろうとした瞬間、一護が岩鷲に向かって叫んだ。
それに反応した剣八達も、言い争いをやめてそっちを見遣る。
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