Long Story

□其の一
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や「つるりーんっ!早くぅー!」

斑「はあ……くそっ、弓親の野郎。じゃんけんとか訳わかんねえ決め方しやがって。なんで俺がこんなこと」

や「つーるーりーんっ!はーやーくーっ!」

斑「あー、はいはい。わかりました。今行きますよ、って、は!?遠っ!なんであんなとこにいんだよ!?ちょ、待ってくださいよ副隊長!一人でさっさと行くな!」

深い溜息を吐き、顔を上げた一角の目に、遥か遠くのやちるが映る。
今二人がいるのは、瀞霊廷の中でもひと際賑わう、大商店街だ。やちる行きつけの駄菓子屋で、今日限定の金平糖が販売されると聞いて、一角が連れて来たのである。
欲しい欲しいと纏わり付かれたので、仕方なくではあるが。
この日は、各隊の隊長が集まる隊首会の日。その為、十一番隊隊長を務める更木剣八は不在。
代わりに、副隊長を務める草鹿やちるの世話を任された、一角である。

や「もー、おそいーっ!なくなったらつるりんのせいだかんね!」

斑「俺かよ!?ってかつるりん言うな!このドチビ!」

やちるの大好物である金平糖の在庫が、隊舎になくなったので、どちらにしても買いに行かない訳にはいかなかった。それは解っている。
だが、今やちるが狙っているのは、今日しか売らない限定の金平糖。当然、やちるは全速力で走っている。
ただでさえ足が早いうえ、全速力である。彼女のそれについて行くのは、剣八以外の者にとっては、中々至難の業である。

店「あら、草鹿副隊長」

や「こんにちはーっ!」

斑「ぜはーっ、ぜはーっ、や、っと、おい、つい、た、っはあ、はあ」

目的の駄菓子屋に到着し、やちるが元気よく声を掛ける。
その後ろから、全速力で追い掛けてきた一角が、激しく息切れを起こす。

や「げんてーのこんぺーとーくださいっ!」

店「ええっと、ごめんなさい。金平糖売り切れちゃったんです。普通のならあるんだけれど」

斑「うげ……」

売り切れの言葉に、一角は血の気が引くのを感じた。
限定の金平糖を、至極楽しみにしていたやちるである。なにも起らないはずがない。

や「っぅ…」

斑「あー、副隊長!普通の金平糖はあるって言ってんですから、それ買って帰りましょ。ね?」

や「やぁだぁっ!げんてーのが食べたいのーっ!わぁぁあんっ!」

斑「んなこと言ったって、どうにもなんねえって……」

金平糖がないと知ったやちるは、案の定大声で泣き出した。
一角が溜息を吐いたと同時に、そのままやちるは何処かへ走り出す。

斑「ちょっ、副隊長!?どこ行くんですか!?副隊長!!」

突然のやちるの逃亡に、一角は思わず面食らう。だがすぐに、慌ててやちるの後を追ったのであった。
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