突撃!? 隣の十三隊♪
□恥ずかしがり屋とかわいこちゃんの十二番隊
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画面が変わり、今までいた機械やモニターだらけの部屋にもうひとり女性の姿が見られる。
黒髪を後ろで結んでいる綺麗な女性、涅ネムだった。
「では、十二番隊のインタビューを始めまっす! こちら、副隊長の涅ネムちゃん」
「こんにちは」
「そしてこちらが、涅マユリ隊長です」
紬の爪と皮膚と髪の毛でマユリが了承したとなると、彼女はそれだけの存在だということだろう。
「涅隊長は隊長職だけでなく、技術開発局の局長も兼任されており、技術面においても護廷十三隊をサポートしていただいています」
「伝令神機を作ったり、剣八の眼帯を作ったり、斬魄刀を修理したりね」
「それから、護廷十三隊の中で探索や解析を主に担当しており、何か事件が起こると早急に調査や捜査をしてくださいます」
「それに関しては、めっちゃ優秀だよね」
「フン。まあ、言っていることは間違っていないネ」
奇怪な顔面では表情を読み解くことは難しいが、マユリの声色からは若干の嬉しさが滲み出ている。
冷酷無比だと言われる彼であっても、そのような感情が存在しているということだろう。失礼な言い方かもしれないが、だから我らが隊長は憎めないのである。
「しかし、私の能力・実力は、そんなものではないヨ」
「では、それを涅隊長から直接説明していただいてよろしいですか?」
「しょうがないネ。お前達にも分かるように、私が説明してあげよう」
咳払いをしてマユリが説明し始める。
しかし、彼の話は少々難しくてよく分からなかった。自分の理解力が乏しいのか、それともただ単にマユリの説明が分かりづらいのか。
要約すると、まず瀞霊廷中に散らばって設置されている監視蟲は、自分が作った。そして、今隣に佇むネムは、自分の義骸技術・義魂技術の粋を集めて作った最高傑作の人造死神だという。
加えて、十一番隊長が戦いの度に眼帯を失くしているのに、それを文句も言わず、更に改良を加えた最高のものを提供する自分の懐の深さを見給えヨ、と。恐らくそう言っているのだろう。
彼の説明には専門用語や聞き慣れない言葉、修飾語が多くて理解するのが難しかった。
しかし元より、彼が才能に溢れ、能力や実力がとても素晴らしい人物であることはよく分かっている。
「なるほど、スゴイネ〜」
紬が腕を組んで頷く。自分以上に理解していないように思える。
「涅隊長のような技術者、開発者がいらっしゃって、とても頼もしいですね」
「そう思うのなら、もっと私を敬って敬意を払い給え」
「あ、はい。えっと、そして涅隊長の隣にいますネムさんは、彼の娘さんとして日々サポートに励んでいるそうです」
「ネムちゃんは、こんな父親のそばでいつもがんばってるんだよね」
「こんなとは何だ!」
「マユリ様は、私にとって最高の上司であり、そしてかけがえのない父親です」
ずっと静かに佇んでいたネムが、無表情でそう述べる。
「ネムちゃん、健気!」
「当然だヨ」
「そんなネムちゃんに対して、このバイキンマンはいっつも罵倒して暴力を振るうんだよね。お茶の間のみんな! こんなの赦せる!? こんな健気でめっちゃかわいいネムちゃんに、このバイキンマンは――」
「だから私をそんな汚らわしい名前で呼ぶなと言っているだろう!」
「いつも暴言を吐いて暴力を振ってるんだよ! だからあたし、そんなところを見たら即刻レッドカードを出してバイキンマンを退場にさせてるんだよね」
「ネムは私が作ったものだ。私がどうしようと勝手だろう」
マユリを否定する意図はないが、その理屈は理解しかねる。
「まあ、マタドーラの言い分は誰も聞いてないけど」
「何だと!?」
マユリは紬から奇妙なあだ名で呼ばれており、それを嫌がっているようだが、しかしそのあだ名を自分のものと認識しているようである。
「ネムちゃんは副隊長の他に、我らが女性死神協会の書記をやってくれてるんだよね」
「前から思っていたが、何なんだネ、それは。ネムは何時までそんなくだらないことをやっているんだ」
そういえば、自分は女性死神協会も男性死神協会もその存在を耳にしたことはある。しかし、どのような活動をしているのか具体的には知らない。
「女性死神協会ってのは、女性の死神を集めておもしろおかしく活動する会」
「女性死神の地位向上と待遇改善を目的に設立された協会だそうです」
「あたしが修行から瀞霊廷に戻ってきたときにはすでに存在しててさ。おもしろそうだから、あたしと愛胡も入れてもらったんだ」
「そうなんです。急に参加させていただいたんですけど、皆さんとても優しい方々で」
てっきり紬が立ち上げた協会だと思ってしまったが、そういえば紬の存在を知る前から死神協会の名を耳にしていただろうか。
しかし、紬の言う修行とは何なのだろう。
「最初は、隊長副隊長とか席官クラスの死神だけの会だったみたいなんだよね」
紬の説明によると、会長が草鹿やちる、副会長が伊勢七緒、書記がネム、理事長が卯ノ花烈という感じで、二番隊から十三番隊までの女性の隊長や副隊長、席官クラスの死神がメンバーとして在籍していたようだった。
「それで、どうせなら女の子みんなで活動した方がおもしろそうだと思って、平隊士であるルッキーも一緒に参加させたんだよね。だからメンバーは、あたし、愛胡、マーヤ、烈ちゃん、勇音ちゃん、雛桃、七ちん、乱ちゃん、やちるちゃん、ネムちゃん、清ちゃん、ルッキー」
紬が右手の指を折りながらメンバーを述べていき、最後に人差し指が折れた。
「12人だね!」
「そんなことはどうでもいいんだが」
確かに少し話がずれてきている。
しかし、何だか楽しそうな集まりである。
「あたしがメンバーで一番偉い、COA? だっけ? なんだよね」
シーオーエーという言葉は初めて聞いた。どういう意味だろうか。
「え? 確か、CEOって言ってなかった?」
「あ、それそれ! そのCEOっていうのが、あたしの役職なんだ」
シーイーオーという言葉も始めて聞いた。
「シーイーオー? 何だネ、それは」
「うん、えっと、最高……なんだっけ、ド忘れしちゃった。最高……経営なんとかっていう。とにかく一番偉い役職!」
「そんな言葉、一体どこで覚えてきたんだネ」
「なんか前、一護と暇すぎたときに話してて」
今彼女は、以前尸魂界に侵入してなんやかんやあった旅禍、黒崎一護の名前を口にしただろうか。まさかあの黒崎一護とも面識があるとは。
それに、面識どころかふたりの仲が親しい口振りだった。
「暇すぎて、意識高く会社経営の話までしちゃってさ」
「黒崎一護もいい迷惑だっただろう。同情はしないがネ」
「会社経営の予定は別にないんだけどね。でも、一護がなんかそういう偉い役職を聞いたことがあるって。それ、あたしにピッタリだ! と思ってね」
「貴様にピッタリの役職など存在しないと思うが」
「そしてネムちゃんの方は、書記として活動を記録したり活動する場所を提供してれたり、空間を作ってくれたりしてるんだ。中でも特に、クッキーの屋敷が広くて居心地が最高なんだよね。ネムちゃん、空間改造の才能アリだよ!」
「ありがとうございます」
「流石ネム。自慢の娘だヨ」
「ありがとうございます、マユリ様」
恐らく、紬が急にマユリの声帯模写をしたのだろう。されたマユリは驚いて目を見開いた。
「全くお前はかわいいな。誰に似たというんだネ。私か。私の娘だから当たり前か。全くお前はかわいいな」
「ありがとうございます、マユリ様」
紬の声帯模写だと分かっているにも関わらず、ネムは淡々と紬へ礼を述べる。
毎回完璧に声真似をする紬に今回も驚くし、本来の彼なら絶対に言わないような言葉なので、違和感が半端ない。
「朝日向貴様! 私の声で何を言っている!!」
「娘を褒めているだけなのだヨ。娘を褒めるのは当たり前なのだヨ。ネムは世界一、いや、宇宙一かわいいのだヨ」
口調が微妙に違うような気がする。
「ありがとうございます、マユリ様」
尚も紬へ礼を言うネム。
「ネム! 誰に言っている! 私はこっちだヨ!」
「ネムちゃんにお礼言われたかったら、マユリンも同じこと言ってみな」
「誰が言うか!」
「って言っているが、実は常日頃、お前には感謝しているヨ」
「黙れ朝日向!」
「さて、場も温まってきたようだし、あのコーナーいっちゃうか!」
怒るマユリに意を介さず、紬が明るく述べる。
「第1回 チキチキ斬魄刀クイズ〜!!」
「聞いているのかネ!!」
「あのコーナー」というからには、何度かやったことのあるものかと思いきや、「第1回」とはどういうことか。