Long Story2

□其の五
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傷が完治した愛胡は、剣八と共に久しぶりに我が家に帰ってきた。
家の中は普段と変わりない様子で、愛美の頑張りが窺える。
夕方、愛美が干したであろう洗濯物を取り込んで畳んでいるときだった。

愛「ただいま!」

霊術院から帰ってきた愛美。急いだ様子で廊下を進んでくる。

愛胡「おかえり」
愛「ママ!おかえり!」

愛美が泣き出しそうな顔で抱きついてきたのだった。

愛「ママ、いつもありがとねっ」
愛胡「どうしたの、急に」
愛「パパとお兄ちゃんが、あまりにもだらしなくて!」
剣「…………」

剣八は、聞こえない振りをして瀞霊廷通信を読み続けた。

愛「ママいつもがんばってたんだね。ありがとうっ」
愛胡「愛美もありがとう。家事大変だったでしょ?」

撫でてやると、愛美はふるふると頭を振るった。

愛「ううん。ぜんぜんママみたいにできなかったよ」
愛胡「でも愛美だから、家のこと安心して任せられたよ。ありがとね」
愛「うん。ママ、おかえり」
愛胡「ただいま」

愛美が甘えるようにすり寄ってくる。
家事を任せられるようにまで成長したが、まだまだ子供で愛おしく感じたのだった。



夕飯の支度をしているときに、剣が帰ってきた。
相変わらず傷が絶えなくて、常に包帯を施している。
最近つけられた傷で一際深かったのは、黒崎一護につけられたものらしかった。やはり、彼はとても力のある人物である。

愛胡「おかえり」
愛「おかえりー」
剣「……ただいま」
愛胡「怪我は?手当する?」
剣「いや、今日はいい」
愛胡「じゃあ、もうすぐご飯だから、待っててね」
剣「おう」

最近、剣の愛想がよくなった気がする。剣にも色々と思うことがあるのだろう。
愛胡にとっては深刻に考えてほしくないが、剣が成長する様を感じられて嬉しくも思うのだった。



愛「ママってさ、なんでパパと結婚したの?」

夕飯のときに、愛美がそう訊いてきた。

愛胡「えっ」

そのようなことを訊かれるとは思っていなくて、愛胡は少し狼狽した。

愛「パパ、すっごいだらしなくてがさつじゃん。そりゃあ、強いところはすごいけどさ」
愛胡「えっと、そうだなあ……だらしなくても、他にいいところがいっぱいあるからかなあ」
愛「ふぅん」
愛胡「むしろだらしなくていいの。私が全部やってあげたいから。それに、お父さんはすっごくやさしいし頼れるから、だらしないのなんて気にならなくなるの」
愛「へえ……」
剣「のろけかよ……親父そのドヤ顔やめろ」
愛胡「まあ、だらしないのにも限度があるけどね」
愛「そうだよ、パパ。あんまりママの言うこときかないと愛想尽かされちゃうよ」
八「心配ねえよ。愛胡が俺のこと嫌いになるなんざありえねえからな」
剣「そんな自信、どっから湧いてくんだよ」

――さすがに素直に言いすぎた。今さら恥ずかしくなってくる。

愛胡は、運よく剣八に拾ってもらえたようなものだと考えている。
ここで剣八に見捨てられたら全てを失うので、彼に縋っていくしかない。
それでも、彼はまだ自分のことを愛してくれていると自信を持って言える。決して驕りではない。彼を見ていれば、そう感じられるのである。
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