Long Story2
□其の五
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剣は霊力を上げ、一護へ向かっていく。しかし、剣の攻撃はあっさり避けられてしまった。
剣「うおおおぉおお!!」
一「!?」
それでも諦めずに向かっていき、一初梅霖の切っ先が一護の頬を抉り、そこから血が吹き出た。
けれども一護に弾かれ、あっさり体勢を崩されてしまう。
一「月牙天衝!!」
一護が叫ぶと、刃先から超高密度の霊圧が放出された。それは驚くほど巨大な斬撃で、バランスを崩す剣にとって、避けきれないものだった。
紬「剣――!!」
身を翻すように避けたが、肩口に当たってしまう。
死覇装が破れ、皮膚が斬り裂かれた。
剣「ぐあっ――!」
そのまま地面に叩きつけられた。
一「悪ぃ!大丈夫か?加減したつもりなんだが」
剣「加減なんかっ、してんじゃねえよ……!」
起き上がれないまま、なおも悪態をつく。
紬「大丈夫か剣!見せてみろ!」
血が溢れる肩を抑えながら、剣はゆっくりと立ち上がる。
紬までもが寄ってきて、肩を見られた。
紬「ひでえな。いや、でも貫通するまではいかなかったからよかったな。あれまともに食らってたら、腕持ってかれてたぞ。下手したら……」
一「すげえなお前。加減はしたけど、結構距離近かったし、体勢も崩れてたのに、これだけで済んだってすげえよ」
ふたりの言葉は、剣にとって気休めでしかなかった。
直撃はしなかったが、確かに受けてしまったし、血も止まらない。
やはり、黒崎一護の伝説は伊達じゃないし、自分はなにも成長していなかった。
紬「今日はもう終わりだな。剣、四番に行くぞ」
剣「うる、せえ……ッ」
紬「一護もありがとな。付き合ってくれて」
一「いや、俺は別にいいが。悪かったな」
謝られると、より一層胸糞悪い。
剣「…………」
一「でも、やり合って分かったわ。やっぱ、お前には才能がある」
一護の頬から血が滴っている。
自分の攻撃が、確かに彼へ届いた証拠だった。
剣「……また、俺と戦ってくれるか」
一「ああ。もちろんだ。お前もそれまでにもっと強くなってろよ、剣」
剣「言ってろ。次はぜってェ負かすからな、黒崎一護!」
そう宣言すると、一護が嬉しそうに破顔したのだった。
紬「よし、じゃあ行くか」
そう言うなり、紬が剣を俵担ぎした。
剣「うお!?なんだよ!!」
紬「あたしが連れてった方が早いだろ」
剣「いらねえよクソババア!降ろせッ」
紬「クソババア言うなッ」
剣「イテェッ!」
紬「じゃあな、一護。またな」
一「ああ、またな――」