突撃!? 隣の十三隊♪

□嫁とピンクとあと眼帯の十一番隊
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 本日の放送は、青空の下で始まった。
 いつもなら紬の隣には愛胡がいる筈だが、今回は予想外の人物が立っている。

「どうもー。愛されキャラNo.1のリポーター、朝日向紬ですっ」
「か、解説の朽木ルキアです」
「も〜、緊張しすぎだって、ルッキーっ」
「だから、こういうことは慣れていないと言っただろうっ」

 彼女のことはよく分からないが一時期、時の人になった死神である。
 かつて朽木ルキアは、人間に死神の力を与えるという重罪を犯し、処刑される身となった。しかし、実は元五番隊隊長の藍染が裏で糸を引いていて、寧ろ彼女が被害者だったという事の次第ではなかっただろうか。
 詳しいことは、平隊士である自分にはよく分からない。
 とにかく朽木ルキアは現在、紬や愛胡と仲良くしているという印象である。

「大丈夫だって! 気楽に気楽にっ」
「き、気楽にと言われても……」
「えー、今日は、愛胡の所属する十一番隊にお邪魔しようと思いまーす。だから、今回は代理としてルッキーに来てもらいました!」
「あ、あ、えーっと」
「ちょ、どうしたルッキーっっ」

 戸惑うルキアに、紬が笑いを我慢できない。

「な、何を言えばいいんだ!?」
「じゃあ、意気込みをどうぞ!」
「い、意気込み!? え、えっと、ガンバリマス!」
「あははははハハハハハ!!!」

 腹を抱えて笑う紬。それから画面が切り替わった。
 目の前には、十一番隊の隊舎だと思われる建物の窓が映っている。

「おっ邪魔――!!」

 その窓ガラスを割れんばかりの勢いで開ける紬。
 そんなことより、窓が映っているということは、ここはもちろん玄関ではないということになる。
 なるほど、紬にとって窓も玄関になり得るということだろうか。
 紬が突然窓を開けたことにより、室内で執務をしていた隊士達が一斉に体を震わせてこちらを向いた。

「うわぁあ!?」
「何だぁ!?」

 その中で、この番組の解説者である愛胡の姿も見られる。

「よお、みんな! 精が出ますなあ」

 紬が室内に入っていく。スタッフ達もぞろぞろと窓から室内へ降り立ったのだろう。

「紬、ルキアちゃんっ? もしかして、『突撃!? 隣の十三隊♪』の収録?」

 椅子から立ち上がり、愛胡が戸惑った表情を浮かべる。

「もちのロンさ!」

 紬が明るく返事をすると、それとは反対に表情を曇らせる愛胡。

「……本当に、皆さんに迷惑をかけてたんだな」
「自分の番になって、身に染みて分かったか。でも、そこがいいからね!」
「だから、悪いところだよ……あ、それより一角さん、今日そちら側なんですか?」

 一角とは、十一番隊の斑目三席のことだろう。この撮影スタッフの一員で、いつもカンペをしていた。
 十一番隊なら、今回愛胡と共にインタビューを受けないのだろうか。

「ああ、俺はこっち側って言われたんだ」
「だってさあ、十一番隊の主要キャラって言ったら、一応愛胡とやちるちゃんとアイツとハゲとゆみゆみだろ? あとなんか、マキマキマキゾウみたいなヤツいた気がするけど、そいつはいいや。で、5人ってどう考えても多くてさ。だから、とりまハゲは今回もハゲカンペしてもらおうかと」
「ハゲハゲうるせえ!」

 今までは隊長と副隊長の2人のみがほとんどだった。それが今回5人も出演するとなると、確かに多い気もする。

「私は出なくていいので、一角さん出てください」
「いやいや、愛胡は出るの」
「でも、ただの六席だよ?」
「愛胡以上に意味のある六席はいねえから」
「そんな……」
「じゃあ、僕出ていい?」

 笑顔を湛えながら、席から立ち上がって近づいてくる人物。
 毛先を切り揃えたおかっぱのような髪型で、右の眉頭には赤、右目の目尻には黄色の長い飾りをつけた、中世的な人物だった。恐らく男性で、彼は第五席の綾瀬川弓親だろう。

「いや、アンタもいいよ」
「え、何で!? この美しい僕がいれば画面が映えるのに!」
「愛胡とやちるちゃんと、あと一応剣八だけでいいかと。多いしここ、人数が。めんどくさい」
「だから、私は出なくていいって!」
「いや、だから出るのッ」
「だったら、隊長とやちるさんだけでもいいんじゃないの?」
「ダメッ。愛胡がいないと意味ない! だからルッキーを連れてきたんだし」
「お、おい、こんなところで揉めるな。打ち合わせはしていないのか?」

 焦りながらルキアが仲裁に入ろうとする。
 この番組に、打ち合わせなんてものは段取りに入っていないだろう。いや、そもそも段取りすらないと思う。

「んなことしないって。打ち合わせしたりアポとったりとか一切しないの」
「……大丈夫なのか、この番組」
「何が? まあ、とにかく隊首室で人員をかき集めてくれっ」

 ルキアの不安や愛胡達の不満を余所に、紬があくまでも楽しそうに言い渡したのだった。
 それから画面が切り替わり、先程とは違った室内が映し出される。ここが十一番隊の隊首室なのだろう。
 画面が歪んでノイズが入っているのは、最早仕方ないし気にしない方が賢明だろう。
 映し出されるソファには、向かって右に更木剣八が、左に愛胡が、それから副隊長の草鹿やちるがふたりの間にちょこんと座っている。そして、剣八側に紬が、愛胡側にルキアが立っていた。

「はーい、じゃあまず自己紹介から! 剣八からなっ」

 紬が、持っているマイクを彼の口元へやる。

「あぁ? 面倒くせえ。そんなもんに意味あんのかよ」

 不機嫌な低い声が室内に轟き、画面越しでも冷や汗が滲んでくる。

「え〜? 剣八くん、自分で自己紹介できないんでちゅか〜?」
「あ゛ぁ?」
「ただ自分の役職と名前を言えばいいんだよ。そんくらい、お前であってもできるだろ?」

 愛胡とルキアがハラハラしながら見守る中、剣八は舌打ちを響かせた後に自己紹介を述べたのだった。

「……十一番隊隊長、更木剣八」

 あの更木剣八が、このような浮ついた番組に出演するなんて考えられない。まさに、天と地がひっくり返るような出来事に思えるし、青天の霹靂とも言える。

「では、次は草鹿副隊長、お願いします」

 ルキアに言われ、真ん中のやちるが元気いっぱいに手を挙げる。

「はぁいっ。十一番隊副隊長の、草鹿やちるだよー」
「うん、剣八より上手だねえ。さすが、やちるちゃん!」
「え、あたし、剣ちゃんよりじょうず?」
「うん、じょうずじょうず。そしてかわいい!」
「えっへへ、やったぁ!」
「えっと、では、次は愛胡。自己紹介をお願い」
「はい。十一番隊第六席の、藤嶺愛胡です」

 今回はいつもと違ってインタビューをされる側なので、愛胡に些かの緊張が見られる。

「では、十一番隊の特徴を、ルッキーお願いします!」
「は、はい! えっと、ここ十一番隊は、皆さんもご存知の通り、戦闘に特化した隊です。隊士ひとりとひとりの戦闘力が並外れた強者達の隊で、戦いを最も好むと言われています」

 緊張しつつも十一番隊の説明をするルキア。
 彼女はただの平隊士でありながら、若干の近寄り難さがあったものの、このような姿は好印象であるし、緊張している様子は応援したくもなる。

「それ故に他の隊より怪我人も多く、にも関わらず四番隊へ治療しに来ない、健康診断を受けない、更に書類を回さない、執務をしない、無意味に騒ぎを起こすなど、隊全体の素行が悪く、厄介者の多いところと嫌厭されていましたが、如何せん『戦闘専門部隊』なので、戦いに於いてとても頼りにされています」

 愛胡の説明も分かりやすくていいのだが、ルキアは彼女と違い、隊の悪いところも述べているのでとても興味深い。
 彼女の説明を、紬が相槌を打ちながら聞いていた。
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