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□彼と雨と私
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濡れた体のままペインのもとへ行くと、ペインは暗い部屋の奥で椅子に座っていた。
「ペイン、次の任務のことだけれど…」
その背中に声をかけても、返事は返ってこなかった。
「…ペイン?」
彼の前へまわり顔をのぞくと、目をつぶっていた。
彼が目を閉じているということは、彼は今死んでいるに等しい。
長門がペインの意識を放している間、ペインは寝息一つ立てずに眠りにつく。
動くことはない。
「………」
その冷たい頬にそっと触れると、また体に震えが生じた。
目をつむりぐっとこらえ、唇を噛んだ。
触れてはいけない、ということかしら…
苦笑いを浮かべ、震える手で彼の輪郭をなぞる。
姿勢を低くし、ゆっくり顔を近づけ両手で彼の顔を包むと、その冷たい唇に自分の唇を重ねた。
依然として動かない彼の体は人並み以上に鍛えてあり、無駄な脂肪はなくしっかりとはしているが、自分には今にも壊れてしまいそうなほど儚く見える。
そんな彼が、私は愛しくてたまらないのだ。
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