文
□彼と雨と私
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しとしとしとしと…
外はいつものように薄暗く、雲は光を一線も通さないよう何層にも重なり里を覆っている。
私はこの空が好き。
彼が里を、私を守ってくれているような気がするから。
この里は雨が多い。
しかし、じめじめとした嫌な肌触りはしない。
これも彼が降らせるせいだろうと私は思っている。
彼が降らせた雨に手を伸ばせば、彼の痛みが肌に落ちてくる。
やさしさと悲しみ、怒りでできたその滴は、私の肌に染み込み渇いた心を潤してくれる。
両手で自らの肩を抱き、ふるふると震えた。
ぎゅっと袖を握りしめ、小さくしゃがみこむ。
「…弥彦……」
しばらく雨にあたってから、力なくふらりと立ち上がるとアジトへと戻った。
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