小説

□ソーマさんのジレンマ
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『ソーマさんのジレンマ』



「俺…、ソーマに嫌われてんのかなぁ?」
グスグスと、ベッドに突っ伏しながら愚痴るリンドウの手には、缶ビールが握られていた。
そして足元には空になったアルミ缶が三つ。
リンドウは酒が大好きである。
しかし実のところ、そんなにアルコールに強いわけでもない。
なので、4つめの缶ビールを手にする彼は、すっかりしっかり出来上がっていた。

―――タツミの部屋で。

そう、ここはタツミの部屋なのである。
なのに何故酔っ払ったリンドウがいるのか。

リンドウは新米ゴッドイーターの実地訓練を任されることが多い。
それは彼の優秀さとフェンリルからの信頼を示すものでもある。
実際に彼の率いた場合の生還率は90%以上であり、今日も誰一人かけることなく帰ってきた。
だが、当の任される側のリンドウは、どうしてか新米の訓練をやるたびに落ち込んでしまうようなのだ。
そして、落ち込んだリンドウは人肌が恋しくなるらしく、ビール持参で誰かの部屋に押しかけては、そこのベッドを占拠してしまうという悪癖があった。
最初はツバキやサクヤの元に押しかけていたのだが、そうそうに「女性の睡眠を妨害するな」と追い出されて、ここ最近はずっとソーマが犠牲になっていたのだ。
(うーん、しかしなぁ。ソーマはリンドウさんを嫌いっていうよりは…むしろ好いてると思ってたんだが)
正直この極東支部で、気兼ねなくソーマに話しかけられる人間は限られている。
そしてリンドウはその筆頭だ。
まぁ、確かに酔っ払いにぐだを巻かれるのは迷惑だろうが…。
一方で、暴れるでもなくただ愚図っているだけのリンドウを、ソーマなら嫌がるでもなくそのまま受け入れそうな気もするのだ。
(放置…ともいうけどな)
元気だせー、と適当に声をかけてやりながらタツミは思う。
そろそろリンドウの手から缶を奪ったほうがいいかもしれない。
「ううう。そりゃあ押しかけてた俺が悪いけどさぁ。いきなりアレはないだろぉぉ」
何かソーマが拒絶を示したらしいのだが。
要領の得ないリンドウの愚痴を聞きながら、うーん?と首をかしげるタツミであった。
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