お題小説
□空に歌う
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二人で天を覆うミッドカルの隙間から見た空…
その時交わした約束が、あの人との…最後の会話でした――。
「エアリス」
貴方の声、凄く好きなんだ。
「こんにちわ、ソルジャーさん♪」
「その呼び方、やめようぜ〜?」
「ふふっ、久しぶりだねザックス」
次に好きなのは笑顔。
「逢いたかった?」
「もちろん。お花買ってくれるお客さん、いなくなっちゃう」
「俺ってそんな存在ι?」
「嘘だよ。だって何の連絡もないんだもん」
その笑顔がなくなったら…
「ごめんごめん、最近また忙しくてさ」
「今日は?」
「一日オッケー♪その代わり、明日からまた遠征だけどな…」
「そう…」
きっと私は不安になる。
「そんなカナシー顔すんなって!ずっと逢えないわけじゃないんだしさ」
「でも連絡くれないでしょ?」
「今度はちゃんと連絡するって」
「絶対?」
「絶対」
嫌な予感がするの――。
「――…ザックス?何処に行くの?」
「俺だけの秘密の場所♪」
「秘密の…?」
ザックスに連れられて来た場所は…
「――…はい、とーちゃく」
「ここ…何かあるの?」
あの教会から大して離れていない…光が当たる場所。
「うん、上見て」
教会から見える空よりも、鮮明に見える青。
「わぁ…」
「綺麗だろ?ここからの空」
「うん、よく見付けたね。この場所」
あの時の貴方は、照れ臭そうに笑ったの、覚えてる。
「ホント…綺麗だな。何だか綺麗すぎて…恐いくらい…」
「空が?」
「何となく、ね。こんなに大きな空、見たことなかったから…」
私が見たことある空は、教会に差し込む光だけ。
見上げれば太陽の光だけ。
空なんて見えない。
いつしかそんな空に、憧れを抱いていた。
いつしか手の届かない空が、恐くなっていた。
「こんなの、でっかいに入らないぜ?」
「え…?」
その小さな恐怖を取り除いてくれたのは貴方。
「外の世界に出てみろよ、エアリス。空がどんなにでかいか、見たら絶対びっくりするから!」
「…私も、昔から外に出てみたいって思ってたの。でも…」
「一人は不安?」
「…うん」
いつも優しくて、私を喜ばせてくれる貴方。
「じゃあ、俺と一緒に見に行こう!…それなら恐くないだろ?」
「一緒に…いいの…?」
「もちろん」
あの時の目は、嘘をついている目じゃなかった。
もちろん、貴方が嘘をついた事なんて一度もないけど。
「次の遠征から帰ってきたら、一緒に空を見に行こう。約束…、な?」
「うん、約束!」
貴方の無事さえ分かれば、約束なんてもういいの。
ザックス…あの時は不貞腐れて本当の事を言えなかったけど…。
貴方に毎日逢えないのは、本当は寂しい。
でも、そんな我儘も絶対に口にしないから…どうか無事でいてください。
きっとこの同じ空の下で笑顔でいることを願って…。
あの日、貴方に教えてもらった秘密の場所で、いつまでも待っているから…――。
END.