お題小説

□太陽と月
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パタッ…
――パタッ…



――冷たい。
この感触を、俺は知っている。








あぁ…
雨が降ってるんだ。














曖昧な記憶。
思い出せない。



何故自分は此処にいる?


俺…だけ?
他には誰も居ないんだろうか。


「う…っ……」
「……?」


体が思うように動かない。


「クラ…?」


声がする方へ必死で這いずり、見えたのは横たわる黒と広がる赤。


「ザッ…ク…?」
「無事……よか…っ……」
「ザックス!?」


はっきりとした視界に写ったのは、瀕死のザックス。
どうにかしたくても、もう…手の施し様がなかった。


「何で…、誰にこんなこと…?」
「…言ったら、仇でも…取ってくれる?」


ザックスはフッと鼻で笑って、瞳を閉じた。


「ザックスが、望むなら…」


本気だった。


「…望まない」


ザックス俺を信じていないのだろうか?


「何で…」
「だってお前…、泣きそうな顔するんだもん」


もしかしたらもう泣いてたのかもしれない。
ザックスの顔が、よく見えなくなっていた。


「全部、お前にやる」
「…ッ、いらない…」
「クラウド…お前なら分かるだろ?」


優しく頭を撫でられたら、嫌でも首を横に振ることは出来ない。


分かっていた。
もう、長くはない。


「でも、俺…、ザックスが居ないと…」


打ち付けられる雨の中、ザックスの冷たい手が頬に触れた。

そのまま言葉は貰えず、ザックスは目を閉じた。

力無く、頬に触れていたはずの手も地に落ちる。







「ザックス…」







俺とアンタは正反対。
お世辞でも、似てるなんて言えない。

まるで朝を照らす太陽と夜に浮かぶ月。



全くの正反対。









「アンタが居なかったら、俺は…、どうすれば良い…?」




太陽が居なければ、月は光り輝くことは出来ない。



絶対に無くてはならない存在。















俺はこの日、大切な存在を失った。


END.

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