お題小説
□太陽と月
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俺とアンタは正反対。
お世辞でも似てる、なんて言えない。
まるで朝を照らす太陽と夜に浮かぶ月。
そう…全くの正反対。
太陽と月
「クーラウドッ♪」
「…ザックス!」
「なぁ今日暇ならさ、二人で飯でも食いに行かねぇ?」
奢る!なんて満面の笑みを向けるザックスは、最近よく俺を誘ってくれる。
「う…ん、喜んで」
「決まり〜!んじゃ着替えたら入り口に来いよ。待ってるから」
「うん」
大きく左右に手を振るザックス。
その後ろ姿を見送る途中、何人もの社員に声を掛けられていた。
「………」
つられて振っていた手を静かに下ろす。
まるで自分とは違う彼に少しの劣等感を感じる。
でも、それ以上にザックスと仲の良い人間に嫉妬さえしていた。
自分以外の誰かにその笑顔を見せないでほしい。
無理だとは分かっていた。
でも…何と無く、自分を特別に思っていたのかもしれない。
ザックスは優しいから。
俺を一番に思ってくれているんじゃないかと、期待してしまっていた。
…そんなの唯のエゴ。
ザックスは誰にも優しかった。
少し前に、ザックスから聞いたことがある。
特別な人がいる、と。
一人は夢と誇り、生き甲斐を教えてくれた先輩。
一人は全てを受け入れて、ずっと待ち続けてくれる女の子。
もう一人は…。
――記憶に、ない。