いつの間にかアンタは、俺の事を"新人"と呼ばなくなった。
流れゆく変化
((レノ×ロッド))
昔はそう呼ばれてた事に、無性に腹を立ててた気がする。
馬鹿にされてるような言い方が、凄く凄く悔しくて。
でも、それでも、アンタに呼ばれるその言い方は、どこか心地良かったのかもしれない。
「――…おーい、新人!今日は俺と任務だぞ、と」
"新人"。
レノから聞こえてくる呼び方は、やっぱり相変わらず。
今日こそ言ってやろうじゃあねェか、と思って。
「俺はもう新人じゃねぇ!!」ってさ。
言い切る俺を想像すると、メチャメチャ格好イイ。
そして俺は、振り返った。
レノは笑っていて。
「ホラ、早くしろよ、と」
俺も笑って、口を開いた。
『承知しました』
――その瞬間、俺の言葉を遮るように、後ろから新しく入社した"新人"の声が響く。
俺よりも出来が良くて、俺よりも少し年上の後輩。
俺は、レノと隣に並んで歩くその"新人"を、無言のまま見つめる事しか出来なかった。
そう…俺だけ特別だと思っていたハズの居場所…。
俺のレノにとっての"新人"って居場所は、あっけなく他の奴に取られちまったんだ。
でも――…、俺はもう新人じゃないんだ。
だから別に良いんじゃないか?
そう考えようとしても、今度はそれが無性に淋しくて切なくて…。
「だっせー…」
仕方のないことだと、分かってはいるけど…我儘って言葉では片付けたくなかった。
「――おい、どうした?具合いでも悪いのか」
不意に俺の前に現れたレノ。
突然のことに驚きながらも、こんなガキみたいにひねくれてる所を見透かされたくなくて、とっさに言葉を返す俺。
「べ、別に何でも…。それより、早く任務行けよ!」
「へーいへい」
俺の髪をグシャグシャにして、レノは俺に背中を見せた。
「……レ…」
強がっても、やっぱり背中を見せられるのは辛くて、無意識に名前を呼ぼうとしていた。
ただ、側に居てほしくて。
「…ロッド、今日仕事終わったら飲みに行くぞ、と」
心が、読まれたのかと思った。
その後、レノは俺の返事も聞かずに出ていってしまったけれど…。
「――…あぁ」
名前を呼ばれることが、こんなにも嬉しいことだなんて思いもしなかった。
"新人"よりも、 "ロッド"って呼ばれたことによって生まれた優越感。
新しい居場所。
他の奴よりも、俺はレノに近い存在になれた。
勝手な自己解釈だけど…嬉しいんだ。
そう思っても…、良いかなレノ?
とりあえず、今日の夜会ったら、さりげなく聞いてみようか…――。
END.