秘密部屋

□餡子サマからVv
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「う、うわぁぁぁ!!」


死を目前にして恐怖に染まった顔。


もう随分前に見慣れちまった。


俺の任務は新羅を裏切り、他社と結託し新羅をおとしめようとしていた男を始末すること。

今目の前で腰を抜かしガタガタとみっともなく震えるこの男こそターゲット。

「命だけはっ!!」


聞き飽きた台詞。


俺は何の躊躇いも無く愛用のロッドを振り下ろし、男を肉塊へと還す。


足元には男から流れ出た血。
鼻を刺す鉄の臭い。


いつからだろうな、と。


死体の転がるこの風景を見慣れたのは…。


「ターゲットを始末しました」
『ご苦労。後始末は?』
「ご心配なく」
『そうか…ご苦労だったなそのまま帰宅してくれ』
「了解」


簡単な報告を済ませると携帯の通話を切る。




『非道、人殺し。』

そんな言葉はタークスの前では非難の意味を成さない。むしろ褒め言葉だ。タークスにとってそれが当たり前で、ステータスなのだから…。




家に直行するのも気が引けて、取り敢えず会社に戻って真っ先にシャワーを浴びる。

目に見える返り血は落とせても染み付いた臭いや、根本的な汚れまでは消せない…。

「俺の手は真っ赤だな、と」
「あれ?レノじゃん」



俺の世界は二色だけ。

鮮血の赤とそれが変色した黒…
それ以外の色なんか存在しなかった…。


「暁…」



そう、コイツに出会うまでは。

「任務の帰り?」
「そうだぞ、と」

また一人。俺の赤と黒の世界の住人にしてきたところだぞ、と。

「暁は…って見ればわかるな、と」

おそらく暁は本部待機で、暇を持て余していたからトレーニングでもしてたってところだろう。
汗だくになってるしな、と。

「トレーニングしてた!」

やっぱりな、と。

「なぁレノ!一緒に帰ろうぜ?俺もあがっていいってさっき連絡あったから」
「いいぞ、と。じゃあ待っててやるからさっさと汗流してこいよ、と」
「おう!!」

シャワー室へと姿を消す暁。

不思議だよな。アイツといるだけでこんなにも世界が一変するんだ。赤と黒だけだった世界が鮮やかな色で染まっていく…。

惚れた弱みって事にしておくぞ、と。





なぁ、暁…。

お前は…お前だけは……



あの二色だけの世界には逝かないでくれよ、と…。



FIN
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