秘密部屋
□和泉サマからVv
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《ココロとカラダの方程式》
レノの奴が怪我をした。
…とはいっても腕の骨折程度なんだけどさ。
理由も至って簡単で、本人が言うにゃぁ〜任務中に巻き添えになりそうだった子供を助けたからだっつんだけど、本当のところはどうなんだか。
そんな訳で、レノは骨がくっつくまで社宅で療養中。 いくらケアルの魔法でも折れちまった骨はそう易々とは治らないし、一応『タークスのエース』とかゆ〜肩書きを持っちまってるアイツの負傷は、敵の良い的になっちまうから。
「……これを」
「何コレ?」
仕事の終了時間。 着替えの為に依ったロッカールームで、レノの不在を補うために一時的にコンビ組むことになったルードから、スコッチウイスキーのボトルを手渡された。
「……レノに届けてやれ」
「え〜?? 何で俺が?」
めんどくささに不満たっぷりで眉を寄せれば、ルードはサングラスの奥の瞳で微かに笑う。
「……レノは無類の酒好きだ。 そろそろ酒断ちが辛くて泣きを入れてくる頃だろう。 ……そうなると煩いからな」
そう思うなら、ルードが行きゃ良いじゃん。
俺は心のなかでそんな風に思いながら、帰路へと歩くルードの背中を見送った。
手元に残された酒は、最近のレノのお気に入り銘柄。 きっと俺が届けなかったら、後からブーブー言われるんだろう。
「……ったく、しょーがねぇ」
面倒くせぇけど、見舞いを兼ねて届けてやるか。
俺は社宅へと戻る途中で近くの店に立ち寄り少々のツマミを買い足してから、同じ建物の中にあるレノの部屋へと向かってった。
神羅社員に与えられる社宅の中でもかなり上等な造りのビルに、俺達総務部調査課の社宅がある。
俺の部屋よりも上の階のレノの部屋。
まずは自分の家へと立ち寄り、不必要荷物を下ろして身軽になる。 それからルードから預かった酒のボトルを無理矢理先程の買い物袋に突っ込んで、エレベーターに乗っかった。
軽い浮遊感を伴らって目的の階に到着したエレベーターからほんの少し歩いたところ。 そこがレノの部屋。
呼び鈴を鳴らそうとして……俺は手を止めた。