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□もったいないとらんど
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年の瀬、ひとりぼっちでさびしく年越しをした私は、毎年恒例の歌合戦を見てからそのままこたつでうたた寝した。

こたつの上には空の缶ビール、みかんの皮、つまみ等放置。女子力の欠片も、謹賀新年の清々しさも全くなかった。



カラカラと、ベランダの戸が開く音がした。びっくりしてガバッと起きた私。

その私にびっくりして、びくっとした彼。


鼬「すまない…起こしてしまったな…」

「…ん、久しぶりだね」

鼬「ああ、久しぶり…」


申し訳なさそうにまたベランダの戸を閉める。その様子を見ながら、私はクリスマスから彼のために用意していたクラッカーを手に取り、振り返った彼のお腹めがけ、


パーンっっ!


鼬「!?」


クラッカーを発射してやった。





鼬「なっ…、こ、これは一体…」

「メリークリスマス・よいお年を・明けましておめでとう・今年も宜しくお願い致します…以上!」

鼬「………」

「………」


しばらく、沈黙が続いた。


鼬「…クラッカーのパッケージに、何か注意書きがしてなかったか?」

「…[小さいお子様の手の届かな]…」

鼬「それじゃないな、」

「………[危険ですので、人に向けてのご使用はなさいませんよう]…」

鼬「その通りだな、ちゃんと分かっているじゃないか」

「私、イタチのお腹強いの知ってるもん。それにほら、新年だからきっと御利益ある…」


私が言い終わる前に、彼の拳骨が私の頭に落ちてきた。


「狽いた!?」

鼬「何が俺の腹が強いの知ってるもん、だ!俺のこの高まりきった心拍数はどうしてくれるんだ!」

「何さ!せっかく久しぶり帰ってきたからってお祝い一気にしてあげたのに!全く、なんて可愛い彼女なんだ!照れてないで素直に喜べば!?」

鼬「照れてるんじゃない!驚いて怒っているんだ!」

「あ、そうだ…」


私は口喧嘩を一旦中断し、こたつの中からもうひとつクラッカーを取り出して、もう一発彼のお腹に食らわせた。


「おおお疲れ様でしたーっ」

鼬「…お前って奴は…!!」


今度は拳骨ではなく、私のこめかみにグリグリを食らわしてきた彼。


「んぎゃああああ!!」

鼬「何故反省できない!?俺の躾がなってなかったのか?育て方を間違えたってのか!」

「いつ私の親になった!」

鼬「大体、最初の挨拶並べはわかるが…は?お疲れ様?」


私の頭から手を離した彼と、離された部分をさする私。きょとんとしている彼を私は若干睨み付ける。


鼬「…あ、仕事帰りだからか。だったらそれが一番先…」

「違うよ、」

鼬「…は?」

「出番、終わっちゃったでしょ?イタチ」

鼬「…へ?は?」

「だから、クランクアップ的な…意味で。」


しばらくまた、沈黙。


鼬「…クランクアップ…?」

「だ、だから…穢土転生解けて、真実も弟に見せて、格好良くお別れしたから…もう出番ないでしょ?さすがに。もうフラグないし」

鼬「…あぁ、そういう意味か」

「うん、だからお疲れ様、です」


私は溢れそうになる涙に気付かないふりを続ける。さっきまで全力でふざけていたのに、急に泣いたりしたら、また怒られるかもしれないし。


「大体さー、カブトもなにあっさりやられてんのって話だよ。もうちょっと粘ってほしかったなー…まぁ、カブトのおかげで皆復活できたわけだけど…んでもさ、」

鼬「まだ、あるぞ」

「そういう問題じゃないよね、てか兄弟久しぶりに再会出来たのに、喧嘩になりそうなことばっか言うし、」

鼬「おい、人の話をきけ。俺にまだ出番あるんだぞ?」

「私がどんだけ会えるの楽しみにしてたと思ってん……え?」

鼬「だから、俺に…って、は?」

「………」

鼬「………」

「…今、何て?」

鼬「お、お前の方こそ…」

「………」

鼬「………」

「…出番、あるんだ…いつ?」

鼬「…アニメがもうすぐオリジナルに入るんだ、カカシさんの過去というテーマで。そこに、出して貰えることになった…」

「そ、そっか…良かったね…」

鼬「…お前は…その…なんて言ったんだ、」

「…え、」

鼬「…なんて、言った…」

「…あ、あれ…なんだったっけ…忘れちゃった。あはは…」

鼬「フッ…ま、いいさ。ところで、そうだ…初詣に行かないか?」

「………へ?初詣?」

鼬「ああそうだ」

「…これから?どこの?…捕まるよ?」

鼬「………。任務から戻る途中、山間の人気の少ない神社を見つけたんだ。そこなら大丈夫だろう」

「…お腹空いてない?」

鼬「空いてないと言えば嘘にはなるが…とりあえずそれは戻ってきてからでいい。…行きたくないか?」

「え?」

鼬「無理にとは言わない…お前が嫌ならそれで…」

「い!嫌じゃない!」

鼬「……ん?」

「…行く、一緒に…」

鼬「…そうか。なら、支度してくれ。俺も何か目立たない上着に着替えたいんだが…」

「え?そんなのあるっけ?笑」

鼬「なっ…ないわけではないだろう…全く」


さっきまでの騒がしい口喧嘩はどこへやら。急なご報告と、急なお誘いに私は(ってか私達は)付き合いたてのカップルみたいな気恥ずかしい会話をしてしまった。うん、そんな気がする。

私はこたつ周りを少し片付けて、タンスからイタチに上着をだしてやり、自分もばっちり着込んだ。

そして彼に手をひかれ、その神社目指して外へ出たのだった。
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