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□無力な自分
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「なんで討伐隊を応援しているんだ!?」
『…………?』
不意にワッカの声が聞こえた。
シーモアが討伐隊を応援している会話を聞いたのか驚いた表情を浮かべていた。
「…視察じゃないかしら」
ルールーが説得する言葉をかけるもワッカはどうやら納得しない。
『あ。』
俺の声に反応したのかワッカとルールーが前を向けばシーモアが近づいて来ていた。少し後ずさりしたのは内緒。
「やはりアーロン殿でしたか」
シーモアがアーロンに話かける。
まぁ、聞きたいことは十年前のことだろうけど。
『ユウナ』
「なに?」
『みんなは、信じてるのかな。勝てることを。』
「うん。」
俺の問いにユウナはどこか気まずそうに答える。
『無理だよ』
「葎…?」
『こんな方法じゃあ、シンは…』
キュッと俺は口を噤んだ。
俺はこの先のことを知っているから言えるんだ。
でもユウナは違う。本当に信じてるんだ。
『あ、いや…ごめん。1人になる。』
ユウナは悲しい表情を浮かべていた。
そんなつもり無かったのに。
『なっにしてんだよ!俺は!』
ガンガンと頭を岩に打ちつけていた。
あれ?なんか俺哀れんだような目で見られてね?
「大丈夫ですか?」
『…………っ……!』
ドキリと心臓が跳ねた。
一番会いたくない奴と遭ってしまった。
『シーモア…!』
「ご存知なのでしょう?」
『はぁ?』
「結末を。」
『……なんでお前は…!』
「今までの記憶は私の中にまだ残っています」
『は…?』
何を言い出すんだこの男は。
なぜこいつは、前の記憶があるんだ?
なぜこの作戦を止めないんだ?
「驚いてますね。」
こいつの笑い方は本当に感に障るな。
…にしてもこいつは…
「シンを倒せるわけでもないにも関わらずアルベド族の機械を扱い失敗する。まさにシンの強さを証明する良いイベント…」
『…っ!ふざけんなっ!』
シーモアの付き人が俺を羽交い締めにする。
しかし構わず俺はシーモアに話す。
『たくさんの人が死ぬんだぞ!?何がイベントだ!何がシンの強さを証明するだ!ふざけんな!』
付き人は力を入れているのか腕がまったく微動だにしない。
少しづつシーモアが近づいて来ている。
俺は後ずさりができずただただ奴が近づくのを待つだけだった。
そして、俺とシーモアの顔の距離が僅かになった。
「共にこのイベントの結末をご覧になりましょう。無力なお嬢さん。」
『…………っ……!』
お腹に激痛が響いた。
シーモアに殴られたんだ。
なんて他人事に言うけど痛いものは痛い。
ちくしょう……無力って…悲しいな。
「おい」
「おや、確かユウナ殿のガードの…」
「葎をどうした」
「…さて、何のことでしょう?」
「とぼけんな!」
「老師様…」
「……………」
「信じて、良いのですか?」
「はい」
シーモアは微笑みかけて答えた。
ユウナもどうやらシーモアを疑っているらしい。
もちろん、ティーダは納得していない表情を浮かべていたが。
2人はシーモアから離れていった。
その背中を見ながら妖しく笑っていたのも気づかずに。