頂き物

□もう手遅れ
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人より低い体温、タバコの臭い。
嫌いじゃない。
包まれるとひんやりして気持ちがいい。
キスをすると、タバコの苦みが口に広がる。
苦いのが好きな訳じゃないけど、嫌いな味ではない。
あまり上手くは言えないけど、とりあえず嫌いではない。


俺がそれをグレイに言ったら、酷く驚かれた。
そんなに驚くことでもないだろうと聞くと、ナツからそんな告白が聞けるとは思わなかったと答えた。
それを聞いて、少し悔しくなったので、いつものように悪口を並べた。

「それでも変態は変態!酒も飲み過ぎ!」

「はいはい。今俺幸せだから何を言われても無駄だぜ」

むかついたので、グレイのズボンを引っぺがしてテーブルの下に隠した。






「変態、タレ目、馬鹿、スケベ、アホ…」

「わかったわかった。とりあえずナツさん。ズボンをどこに隠したのかな?」


とぼとぼと街を歩いていると、後ろからグレイに抱きつかれ、軽く首が締まる。
ぐぇ、とか、うぇ、とかいう変な声が出て振り返ると、パンツだけのグレイがいた。
他人のふりをしようと思ったが、グレイに付け回されて、周りに変な誤解をされるのは嫌だったので、正直に答えることにした。
しかし、これから言いはじめようという口を手で塞がれる。

「後でいい、俺の家こいよ」
















馬鹿だった。
何も考えずにのこのこグレイの家について行った。
相手は変態のグレイだっていうのに、家に入ったのが間違いだった。


「馬鹿、タレ目、変態…」

「悪かったよ。するつもりはなかったんだよ」


嗚呼本当に馬鹿だった。
体中につけられた赤い印。
しばらく前開きの服は辞めようか。
溜息を吐きながら服を身につけていく。
所々隠しきれずに見えている。
グレイは俺の溜息を聞いた後、ナツさんが誘うようなことばっかりするから、と小さく呟いた。
ナツの足がグレイの顔にめりこんだ。


しばらくの沈黙のあと、グレイの視線に気づいて顔をあげた。
かなり至近距離で驚いた。
俺は後ろに手をついて、迫ってくるグレイから逃げるように動く。
しかし、腕を掴まれて、若干無理矢理なキスをされた。


あ、またタバコの味…


普通なら怒るところだけど、どうにも怒る気がなくなった。

どうせグレイの卑怯な機嫌取りだろうけど、そんなグレイを好きになってしまったところから既に俺は相当な変態で馬鹿なんだろうな。



気づいた時にはもう手遅れで、自分が思っている以上にグレイのことが好きなんだ。
認めるのが嫌だから、今日も彼の悪口を並べる。



―end―


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