リトルアンカー

□雪の中のぬくもり
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ある冬の寒い日…―――――――

白い雪がフワリフワリと降っている。



冷たい雪が俺の躯を包み込む。



******



寒い…。



「俺……」



俺、なんで外に居るんだ?
こんな寒い日に。



なんでだっけな…?



「……………」



まぁ、いい。
理由なんかどうせないんだろう。

じゃあ、エリュシオンに戻ればいい。



……のに。

俺の足はエリュシオンから遠ざかるばかりで。



「…寒い」



真っ白な光景。

俺の心も、こんな景色なんだろうな。
こんな風に真っ白で、冷たくて、空っぽなんだ。



「………逢いたい…」



誰に?

吐く息とともに零れる。



「………逢いたいんだ…」



誰に逢いたいんだ?
俺は。



「…躯…寒い…」



足が止まる。
雪が、フワリと降り積もる。



「…寒い…冷たい…」



――――――レイシェンさん…



「……雪乃…」



雪乃…。
そうだ、俺は雪乃に逢いたいんだ。



――――――私が居なくなるってことに…



「………っ………」



――――――貴方は淋しいって思ってくれますか?



「………淋しいに決まってるだろ…」

――――淋しいなんて思わない。



精一杯の強がり。
なんでもないフリ。

表には出さなかった。



―――――私は"淋しい"ですよ?



あの時、雪乃はどんな顔をしていた?

呆れてた?
悲しんでた?



それとも…



「………泣いていたのか?雪乃…」



ぎゅうっと、拳を握る。



「レイシェンさん……?」



え…?

懐かしい…声。
耳元で響く、愛しい声。

ゆっくりと俺は後ろを振り向く。
おそるおそると。

其処に居るのは間違いなくあいつだ。



声で判った。



「……ゆき、の…?」



逢いたくて、逢いたくて。
愛しくて。

やっと、逢えた。



「――――…雪乃っ!!」



俺の愛しい人。
俺の冷たい心を、この人は温めてくれる。

雪乃…。
ずっと、待ってた。

お前が居なくなった、あの時からずっと。

忘れかけていた。
俺はなんで外に居たのか。



「――――…レイシェンさん…」



お前が帰ってくるのを待ってたんだ。



「寂しかったって思ってくれてましたか?」



淋しかった。
辛かった。



「――――…当たり、前だっ……」



たった一年、お前が居なかっただけでこんなにも辛いなんて、思ってなかったんだぞ?



「……馬鹿雪乃っ…」

「レイシェン…さん…」



ぎゅうっと、俺は雪乃の躯を抱き締めた。
このぬくもりを、離したくないと思った。



「……もう何処にも行かないでくれ…」



心が痛くなるから。



「……俺を、独りにしないでくれ…」



涙が零れるから。



「―――…レイシェンさん……あのね、私も…」
「……?」

「―――…私も、貴方に逢えなくて淋しかった…」



雪乃も俺と同じ気持ちで。
淋しいって。



「何度、貴方に逢いに行こうかって思いました…」

「………雪乃っ…」



あったかいよ。

お前の体温…――――――



「もう、何処にも行くな…」

「行きませんよ。貴方を置いてなんて、無理です…」



白い吐息。

もう寒くない。
お前がいるから、俺はもう寒くない。



けど。

けどな?このぬくもりだけは絶対に誰にも渡さないからな。



「―――――…愛してる…」







End

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