第一の本棚

□オルキューレの騎士
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色とりどりの花が咲き乱れる国。

フィオーレ王国。

この国には国民に慕われる心優しい姫君がいて

厳格で古風でお堅い騎士がいつも傍に仕えておりました。

クライツ・オルキューレ

王に仕える騎士の家系の次男。

いつも黒い甲冑を一部の隙も無く着こなし姫の護衛を勤めている。

剣の腕で彼の右にでる者は無く王国最強の騎士と呼ばれている。

向かうところ敵なし。

そう呼ばれる彼にも弱点はある。

それは幼馴染の

「クライツさん!」

自分が護衛を勤める姫。

シャーラ・フィオーレ姫

ゆったりとしたドレープたっぷりの淡いピンクのドレスをヒラヒラさせてバスケット片手に走ってきた。

無邪気で優しいこの国の第二王女にして幼馴染。

彼女がクライツの弱点だ。

「姫…走ると転びますよ。はしたない。」

クライツは走ってきたシャーラ姫を咎めた。

「クライツさん…昔はシャーラって呼んでくれてたのに。」

「子供の頃の事でしょう。私はもう18、姫は16。大人なのですから。」

頬をふくらませるシャーラ姫をあしらうクライツ。

バスケットが目に入った。

「姫、そのバスケットは?」

「マフィンとブラウニー、エルザが作ってくれたから二人で食べようと思って。」

「姫…」

そんな事のために走ったのですか?

クライツは右手で頭を抑えた。

昔から姫はクライツクライツ、と物心ついた頃からまるで雛のように後ろをヒョコヒョコとついて来る。

「わかりました、薔薇園に紅茶を用意しましょう。」

ふわりと嬉しそうに笑う姫を見てクライツは思った。

やはり苦手だ。

俺の心をかき乱してくる愛おしい幼馴染は。
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