第三の本棚
□時計屋ウサギとアリスの夢
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ここは絵本の世界。
『不思議の国のアリス』
森の木もおしゃべりする花もいつもどうり。
紫色のチェシャネコも青い芋虫もいつもどうり。
だけど何かが違う。
「おーい、ハリネズミくん。他の皆は?」
「皆居なくなっちゃった…」
公爵夫人もハートの女王様も皆いない。
森の中を歩いていると女の子を見つけた。
青いワンピースに白いフリルのエプロン
アリスだ。
だけど今の現実の世界は夜。
夜の絵本の世界の主人公は夢を見ている子供達。
「ようこそ。不思議の国、夢の世界。不思議の国のアリスへ。」
礼儀として挨拶をした。
「どうしてウサギが?居ないはずだよ。」
え、とウサギは少女を見た。
手には血で赤く染まったナイフ。
「アリスの世界が…」
アリスの世界が壊れている。
他の絵本の世界を夢に見ていた少女たちがここに居て…どうなっているの?
「ここは夢の国よ?」
そう、夢の国。
目が覚めたら消えてなくなる。
忘れられる世界。
「私はこの夢の世界の主人公、お姫様。」
少女は無邪気に笑った。