刻ヲ超エテ
□いちわ
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『……んっ』
皆が四人の突然の登場に戸惑う中、一人の少年がゆっくりと体を起こした。
「…神田…?」
それは神田に似た少年、優だった。
『っだ、誰!?』
優は上から掛けられた、いきなりの声に驚き一歩後ろへ下がり、へっぴり腰で声がした方を見上げる。
『…』
そこには目に不思議な傷を付けたアレンがいた。
『…あ、れん?』
しかし、急に大人びたアレンに疑問を持ち半信半疑で名前を呼ぶ。
「…は?」
『あ、でも…おっきい…かも』
知らない子である優に名前を呼ばれたアレンは驚いたように優を見ると、優は気まずそうにオドオドとした。
「か、神田に似てるのに似てない…」
そんな姿を見てアレンは苦笑いを浮かべた。
「チッ…一緒にすんじゃねぇ」
アレンの不可抗力の言葉に神田は舌打ちをして、何の非もないはず優を睨む。
『ひっ!!』
その恐さに優は小さな悲鳴を上げた。
「神田!小さい子を怖がらせちゃ、ダメでしょ!?」
そこで子供の正義の味方、リナリーが優の前に立ち、優を庇う。
「ところで、名前は何て言うんですか?」
リナリーに庇われている優にアレンはひょっこりと怯えないように近付いて聞いた。
『…ぅ』
「え?」
『か、神田…優…』
「……ん?」
『ぼ、僕は神田優、です』
優は恥ずかしそうにリナリーの後ろに隠れ、ビクビクしながら答えた。リナリーも他人だと言う事はこの際気付いていないのだろう。
「か、神田?」
『は、はひ!!』
優は無言で大きく頷いたが、噛んでしまった羞恥に顔を真っ赤にする。
「えっとぉ……ですって、神田」
そんな優を見ながら、頬を掻いてアレンは神田を見た。
「知るかよ…」
「へぇ…」
それでも素っ気ない態度の神田にアレンはニヤリと笑みを浮かべる。
「僕はアレン・ウォーカーです。よろしくお願いしますね、優!」
「モヤシ!ファーストネームで呼ぶんじゃねェ!」
「ハッハッハッ!やだなぁ、僕はこっちの優を名前で呼んだんですよ?」
挨拶をしただけだが、神田は自分の名前を呼ばれた事に苛立ち、アレンはそれを見てニタニタと笑う。
『…アレン?』
優はアレンの自己紹介を聞いて顔を真っ青にさせる。
「はい、アレンですが…」
『あ、アレンと同じだ』
優はポツリと言った。
「同じ?」
『うん、友達もアレン。アレン・ウォーカー』
「「「!?」」」
これは偶然なのか。しかし、あまりにも偶然過ぎる事にその場の皆は驚いた。
だが、ラビだけ真剣な表情をし考える仕種をする。
「優はアレンと仲良し?」
「バカ兎…っ」
「優は優でもユウじゃないさ〜(笑」
ラビは神田で遊ぶようにケタケタと笑う。神田とて先程アレンにも同じような事をされ微かに青筋を立てている。
「アレンと優が仲良し…アハハハハ!アレンとユウが仲良しって…っブワハハハハハ!」
仮想19世紀で不仲である神田とアレンが突然来た同姓同士が別で仲が良いと知り、ラビは大きな声で笑う。
その声でまた新たに別の少年が目を覚ます。
『…るせぇなぁ』
声変わり前の少年の声でありながらも低い声にラビは笑いを止む。
『あ、アレン』
優は起きた少年の名を呼んだ。
「!?」
起きた少年は目を開けてもアレンにそっくりで思わず驚く。
『アレン?』
ずっと俯いているアレンに心配そうに優は顔をのぞかせた。
が、
『オイ、優…』
『はひ!!?』
アレンのどす黒い声に優は声を裏返らせ涙を目尻に浮かばせ、カタカタと震える。
『煩いんですよ?分かります?』
『…う、うん』
『なら、あの人達を黙らせろや』
『むむむ無理ぃ!僕には出来ないよ!!』
弱虫とすら昔から言われる優は頭を必死に横へ振る。
†