刻ヲ超エテ

□Prologue
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ガタコン

ガタコン



帰りの汽車の中、静かにゆれ、任務を終えた四人も静かにしていた頃、


『ねぇ』


リナリーが沈黙を破った。


『リナリー、どうしたんですか?』

『急だけどさ…昔さアレンくんと同じ名前の人がセンネンハクシャク?を倒したんだよね?』

『あーはい、そうらしいです。実際に僕の先祖らしいですし。でも、そのハクシャクは今、存在しない。なのにアクマはいるんですよね…』


不思議です。とアレンは苦笑いをして答えた。確かに千年伯爵と呼ばれる脅威的存在の敵の当主は当の昔に《アレン・ウォーカー》と呼ばれる者が倒した。しかし、アクマを造っていた千年伯爵がいなくなった今でもアクマは存在しているのだ。


『…ハクシャクは私達にとって大きな爆弾を置いて逝っちゃったんだね…』


人間達を守るために存在するエクソシスト。それが自分達なのだ。

だけど守れなかった人達もいる。その現実にリナリーは悲しそうに俯いき、言葉を繋げた。


『その頃、アクマはレベル4までだったんだって。資料で知ったの。』

『でも今のアクマは進化をしてレベル8までいます』

『まだまだいっぱいいるけど、私達なら…アクマをこの世界から救える、かな?』


成長するのはイノセンスだけではない。レベルを更に上げているアクマにリナリーは少し弱音を吐く。


『はい、きっと』

『リナリー、俺達はまだ子供だ。これから力を付けてアクマを…世界を救おう…』


まだ子供。本当はそんな事に甘えられないのは四人共知っているが然れど子供。まだ世界を守るには荷が重いのだ。


『うん、もっと強くなってみせるんだから!』


ラビの言葉に押され、リナリーは嬉しそうな顔で頷いた。

子供。然れどエクソシスト。世界は確かに広く、アクマもまだ沢山いるけれど、リナリーには三人に対して絶対的な信頼を持っていた。だからこそ、そう強い言葉が言えるのだ。


『ね、ねぇ』


やる気を持ち始めたリナリーの隣で、ずっと黙っていた優が口を開いた。


『なんですか、優』

『僕達…何処に向かってるの?』


顔を青ざめさせながら優が言った言葉は理解不能だった。


『教団に帰るんだよ』

『で、でも…』


ブルリと優は肩を震わせた。


『なに?』

『さっきから真っ暗だよ…』


外を指差しながら言う優に三人は窓の外を見る。

今の時間はまだ昼だ。トンネルであっても、こんなに長いはずがない。


『本当だ…真っ暗』


リナリーは窓の外を吸い込まれるように見た。


その突如、歌が聞こえた…


〜♪


『…うた?』


その歌声に始めに気づいたのはラビだった。


『本当だ、歌が聞こえる。』


ラビの言葉に他の三人も耳を澄ませ歌声を聴く。歌は今にも消えてしまいそうな大きさだ。



――んだよ♪



しかし、だんだんと大きく聞こえてくる。




―――君達は

覚えているだろうか?

約束した僕らの一つの欠片

うっすら見える

輝き放つ光の炎♪




『…何?この歌…』





勇敢な貴方達は

私を風に乗せて

夕闇に浮かぶ空
光輝く月

全ての闇を輝かす♪




『誰が歌ってるんだ?』




闇を明かすお前達を求め

そして守りたくて

俺は背を向け闇を切り裂く

泣きはしないよ

だけど望むなら

光を照らして下さい
闇をはらって下さい




『近づいてませんか?』



何処までも続く空を
気まぐれに浮かぶ雲を


光で輝かせて

月日を重ねて

お前達と俺は繋がっている

どんなに離れていたって
想いは願いは変わらない

光を求めて―♪




『…願い…求める?』


優は歌を聞いて、口に出した。


『どういう事?』

『この歌、多分僕らにしか聞こえないと思う…』

『それは神の使途だから?』




僕は君達に祈り続ける

光を輝かせ
闇を照らす

僕らにしか出来ない

世界を照らせ――


―――――君達は

覚えているだろうか?

約束した僕らの一つの欠片

うっすら見える

輝き放つ光の炎


僕達は私達は俺達は

再びここで会おう―――



『分かんないけど、行かなきゃいけない気がする』

『優はこの歌が私達を呼んでるように聞こえるの?』

『う、ん』


歌が聞こえる中、優は悲痛に顔を歪め自分の手を下の方で握り、ゆっくり頷く。


『もし、本当に僕らを呼んでいるんだとしたら…』


アレンは険しい顔で三人を見た。


『…行って、みますか?』


優が言っていた事が確かとは限らない。しかし、アレンは優の言葉を信じた。


『私は行く』


リナリーはキッと眉を上げ、アレンの後ろに着いて歩く。


『ちょっ二人が行くんなら俺も行くって!』


そんな姿を見たラビは半信半疑に思いながらも追い掛けるように着く。


『うぇえ!?僕を置いて行かないでよー!』


そして優も、目尻に涙を溜めて追い掛けた。



その瞬間…





目映い光に四人は包まれて


…消えてしまった。







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