刻ヲ超エテ
□Prologue
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ドン
ドーン
――――光が木々から零れる深い森の中で爆発音が鳴り響く。
『はぁ、はっ!リナ、リー…こっちは終わりましたよ!』
ある一人の白髪の少年の呼び声でリナリーと呼ばれた少女は振り向く。
『アレンくん、こっちも終わった!』
リナリーは可愛らしい微笑みで白髪な少年、アレンに言った。
『優とラビはどうでしょう…。まあ、アクマを倒せてなかったら後でお仕置きです(黒笑』
クスと黒い笑みを浮かべながら《イノセンス》をしまうとリナリーの傍に寄った。
アクマ…それは人を殺す殺人兵器と言われている。
また、それを唯一壊す事を出来るのが《イノセンス》である。
『おー、リナリーとアレンじゃん!そっちは終わったのか?』
『ラビ!無事だったのね!』
ひょっこりと木の影からラビと呼ばれる少年が出てきて、ラビも二人の元へ駆けてきた。
無傷な姿を見てリナリーは良かったと胸を撫で下ろす。
『優は?』
だが任務に来ていた人の中で一人だけ見当たらない事に気づき、アレンはキョロキョロと辺りを見渡す。
すると、何やら後ろから草の音が微かになった。
『こっちだ』
『あ、生きてたんですね』
優と呼ばれる少年は三人の後ろから現れ、無事だと言う事を知らせるが、アレンは何処か残念そうに言葉を零した。
『てめぇ、俺を誰だと思ってんだよ』
『誰って…もし、貴方が出なかったら《優》は死んでましたし?』
反論しようとした《ユウ》にアレンはニッコリとした表情で答える。
それには反論出来ないのか《ユウ》は気まずそうに舌打ちをした。
『チッ…そろそろ変わらないとな』
《ユウ》はポツリとそう言うとフラリと後ろへ倒れる。
ドサッ
余りにも見慣れた光景に三人は何もいわず、《優》が目を覚ますのを待った。
倒れて少しすると《ユウ》は目を覚ました。
『あ。優、おはよーさん!』
『ラビ、おはよう…?アクマは?』
《優》は先ほどと変わって、性格そのものが大らかになっていた。
『なに、言ってるんだよ!《ユウ》が倒したんだろう?』
『…僕が?』
優は何もしてないよ?と言うが確かに優は何もしていないが、《ユウ》がやったのは確かだ。
実は優と言う人物の中には違う《ユウ》がいるのだ。
その名前は勇。
優(ユウ)と勇(ユウ)の発音が同じではあるが、人格はまるで違うのだ。
つまり二重人格と見られる。
『もしかして勇?』
優は自分の中に勇がいる事に気が付いているが、表立って行動出来る事には気付いていないのだ。
『さぁ?』
『でも、優!お疲れ様!!』
だから敢えて知らないフリをする。もし、彼に勇の存在が表立って行動していると知ると、きっと優は勇の人格を知っているが故に三人との距離を空けるだろうからだ。
優はそんな奴だからこそ言えないのだ。
『取り敢えず任務終了です。帰りましょう』
アレンはポケットから小型電話を取り出し、連絡を終えて黒の教団と言う本部へ帰る。
これが四人の日常だ。
でも…
日常は非日常に変わってしまう。
『帰ったら、ご飯でも食べよ!』
『俺は寝る!ぜぇったい寝るし!!』
『僕もリナリーと食べます。優は?』
『僕は…科学班の手伝いする!』
『あははっ優は真面目だなぁ!!』
――――深い深い森の中…
少年少女の笑い声が響く
響く…
これから
何が起こるのかも
知らずに…
†