幸せは繋いだ手の中に

□seventh heaven
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…いやもうどうしたらイイんでしょう、この今までの人生で最大の緊張感――。




密室と言えるだろう今現在自分が置かれている状況に予想通り言葉を発せなくなった私と政宗さんを乗せたエレベーターは押したボタン通りに最上階へと行く。


その間、言葉を発しない以前に緊張のあまり無意識の内に息を止めてしまっていた私は、再びエレベーターのドアが開いた時にはヘロヘロの酸欠状態で、政宗さんに振り向かれるくらいの深呼吸をしてしまい、自分で自分を追い込んでしまっていたコトに頭を抱えたくなった。







そして降り立ったその階のフロアを手を引かれるままに付いていけばたどり着いたドアの前。

もうそのドアの大きさや装飾からいって普通のマンションのドアとは全然違うというのが嫌でも分かる。




「…まぁとりあえず入れよ。」

「は…ぃ。ぉ邪魔シマス…――。」








…な、に?この玄関の広さ――

…な、に?この廊下の幅――



手をクイッと引かれ、『とりあえず』の言葉通り玄関部分へ一歩踏み入れてみたはいいが、またそこから足が止まり、バタンっとドアが閉まる音にさえ身体がビクリと反応してしまった。



今更ながら私はとんでもない人を好きになってしまったじゃないだろうか――


そんな想いばかりが頭の中を駆け巡り、目線は下ばかりをさ迷ってしまう。










「…紗織――もしかして男の家に来るのは初めてなのか…?」

「…は、ぁ、ハイ…そう、です――。」



「…ンならやっぱ今まで男と付き合ったコト無ぇっつーのもマジな話…なのか?」

「…えっ!?何でそんな話…あ、やだもうっ!!ソレも元親先生から聞いたんですかっ!?そのコト前にポロッと言ったら『ンなヤツ今時いんのかよ』って吹き出されて笑われたんですよっ!?だから言わないでって言ったのに…――。」


驚きの余り、勢いよく声を張り上げながら政宗さんを見上げたがそれは一瞬のコトで、最後のほうを言い終えるあたりには視線はまた下を向いた。


もうソレを政宗さんに言った犯人は元親先生に違いないのだけれど――

そんなコトより




「……やっぱガチだったか…――。」




私に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟くように言った政宗さんの言葉が胸に突き刺さった。





経験がないのによく来たな…なんて思ってるかもしれない。

面倒くさいの連れてきた…と思ってるかもしれない。




そう思うと悲しいというより逃げ出したい気持ちになってきてジリッと片足を一歩引いていた。








「…ンならますます大事にしなきゃな…――。」

「…ぇ――?」



直後、急にグッと手を引かれ、グラッと前方に身体のバランスが崩れてよろけそうになるが、倒れ込む前に政宗さんの腕の中に閉じ込められた。





「…大事にするから、な――。」



最初に言った言葉は自分自身に言い聞かせるようなカンジだったけど、今の言葉は確実に私へと向けられていて、頭に添えられた手は宥めるように髪を撫でてくれる。




政宗さんは私がどんな言葉を欲しいのか分かってくれている。

未だに小さなコトで激しく揺れ動いてしまう心の中だというのに、政宗さんの言葉はピタリとその揺れを止めてしまう。




言えなくても――


言わなくても――。





ドサッとトランクを足元に落とし、顔を胸元に押し付けながら政宗さんの背に両手を回して『(うん。)』と頷くと、政宗さんはもっと強く抱き締めてくれた――。







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