幸せは繋いだ手の中に
□seventh heaven
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「着いたぞ。」
「こ、ココですか…?」
初めて来た政宗さんのマンション。
…御見逸れしました。
ご実家も立派ですけど、こちらも呆気にとられるくらいのマンションですね――。
エントランス前で呆然と立って上を見上げてれば『ウチは最上階だからな』とサラッと言われた。
いや、もうコレはアレでしょ…
「…政宗さん、ホント今更なコト聞きますけど、お仕事は“普通のサラリーマン”じゃなくて“サラリーを払う側の人”ですよね…?」
「Ah!?俺まだ言ってなかった、か…?」
「…言われてませんよ。輝おじさまの息子さんなのに、普通のサラリーマンってアリなのかなーってちょっと疑問には思ってましたけど、まぁどーでもイイことかーって思ったから聞かなかったんですけどね。」
「ど、『どーでもイイ』…?」
「え?…だって私が好きになったのは政宗さんであって、仕事云々は関係ないですもん。政宗さんは私が看護師してるから好きになってくれたんですか?」
「…いや、それは関係ねぇな――。」
「あ、良かった〜。ソレ聞いて安心しました。何か『職業は看護師です』って言っただけでヘンに目の色を変える男の人がたまにいるんですよね。何かおかしな偏見持ってるみたいで――。」
「……あー、そういうヤツたまにいるよな…――。(汗)」
「…でも嘘吐いて悪かったな――。」
「別に謝るような嘘じゃないですってば。現に私は気にしてないですし、後ろ見の立ち姿で何となくは察してましたから。――…でもこのマンション豪華すぎて入りづらいなぁ…。一般人を雰囲気だけでシャットアウトしてるというか…。…なんかちょっと帰りたい気分に…――」
「え゛…――「…嘘ですよー。…はい、これでおあいこにしましょ?」
「オマッ…、…中々やるな…。マジで上がったり下がったりで心臓に悪ぃからそういうjokeは止めてくれ…。」
「大丈夫ですって。万が一のコトがあっても対処法は習得してますから。」
「…なんかさぁ、オマエのほうが余裕あるよな――」
「…はい?」
「…いや、コッチの話。」
…違いますよ、政宗さん――。
心臓に悪いのもお互い様なんです――。
「余裕なんかないから喋ってないともたないんですよ…――。」
「…Ha?」
「…いえ、コッチの話です。」
ああでも、もうこの状態を保っていられるのも時間の問題かもしれない。
期待と不安に押し潰されそう。
ハッキリ対極に分かれてるのならまだしも、もう2つの感情がごちゃまぜになっているから足が竦みそうになる。
現に政宗さんがロックを解除してドアが開いたというのにその場から動けなかった。
政宗さん越しに見えたその先が、まるで別世界のように、異空間のように見えるのはきっと気のせいじゃないと思う。
「…紗織。ンな心配そうな顔すんなよ――。」
「…ん。大丈夫。」
差し伸べてくれた手を私はまたギュッと握った。
不安なんて消えてしまえばいいと――。
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