君のその手を
□21章:私の知らない貴方。
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『よっこらせっ!!って、ぅええっ!?』
グイッとダンボールのサイドにある持ち手部分に両手を突っ込んで持ち上げた途端、ダンボールの底が本の重みでガパッと開いてしまい全部バラバラに。
最後の最後でコレである。
「せ、セーフ…――。」
一気に気持ちは落胆してしまったが、数冊直撃した足は無事だった。
スリッパを着用していたのと、ほぼ上に持ち上げた瞬間にバラけたので落下高度が高くなかったのが幸いだったみたいだ。
そうしてダンボールの底を2重3重にガムテープで止めてから、落ちた衝撃でまたバラバラになってしまった医学書を1つの場所に集めて揃え直し、また詰め直す作業を再開した。
あれ…?
何か紙切れ…?
どれかに挟まってたのかな…?
本を手繰り寄せてた際、ふと視界に入った床に落ちていた1枚の紙。
さっきまではなかったし、開いた状態で床に落ちた本が数冊あったからその中のどれかから抜け落ちてしまったんだろう。
…ん?…何か書いてある。
While there's life, there's hope.
生命のある限り――
希望はある―― …?
あ…、これ紙じゃなくて写真だ――
それを読みながら手に取ってみるとその質感から写真だと直ぐに分かった。
そしてその文字が書かれた面は裏であり、何気無しに表を返してみれば――
今よりずっと若く見える先生と…スラッと細身の綺麗な女の人が一緒に写っていた――
しかも先生がその女の人の身体を抱き寄せるように肩を組んでいて――
予測だが多分、医大生の頃の先生の姿――。
出逢う前の私が知らない元親さんがそこに居る――
違うヒトと――。
学生時代の話とか色々知りたくて聞いてみたりして、当時“彼女”が居たとかというのも聞いてはいたし、居てもオカシクないと思っていた。
…いたけれど――
“こういうカンジ”のを目にすると
“こういうカタチ”で目にすると
正直なトコ、キュッと胸が締め付けられた――。
このメッセージは
“この人”へ向けたモノ――?
“この人”からもらったモノ――?
過去は過去で――
今は今だと割り切れると思ってた――
――でも忘れるコトが出来ない過去もあるという事を自分自身良く分かってる。
…だから不安なのだ。
このヒトは
元親さんにとってどんなヒトだったの――?
その写真を手にしたまま――
ひとりぼっちの長い長い夜は――
一層“過去の事”と割り切るコトなどできなくしていく――
∽∽
アトガキ
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ とりあえず渚さん編というカンジで一旦切ります(´Д`)ちょっとマリッジブルー気味になってしまった渚さんですが次章できっと元親先生が何とかしてくれると思います(σ≧▽≦)σ
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