君のその手を

□21章:私の知らない貴方。
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――そうして滞りなくコトは運び、私の書籍は測ったようにピッタリとスペースに収まった。



うん。椅子を上がったり降りたりするだけで結構疲れるわぁ。

最近バイクに乗ってなかったからかなぁ…。

普段使ってるようで使ってない筋肉ってあるみたいでちょっと椅子の上でグラッとしちゃった。




…とにかく危ない危ない。


…でもセーフ。







「んじゃ次はコレ詰めて、っと――。」



本棚下に降ろしてあった先生の本達は、『古いから読まない』と言ってただけあってハードカバー部分が所々綻んでいたり全体的に色褪せていてかなり読み潰したんではないかと見てとれるような医学書。


そして医学書という部類のモノは1冊1冊が重く図鑑のよう。それもシリーズで揃っているものだから全てを手に持って移動するにはかなり重労働であると予測できる。



でもやっちゃわないとね。



空いたダンボールは4箱分。私の本が本棚のスペースに収まったってコトは同じようにダンボールのほうにも先生の本が入る筈。それに4分割なら私でも運べる個々の重さにはなるだろう。先生はヒョイヒョイと何回かに分けて棚から降ろしてたが同じ回数でこなせと言われても私には絶対に無理だ。


そして医学書を1巻から順にダンボールに詰めていく。

そして全部詰め終わった所でダンボールの上蓋部分に表紙の書籍名と『1巻〜』というようにマジックで書き、他のダンボールにも同様に書いておいた。




んじゃ和室のほうに持っていこう。



寝室隣にある部屋は8畳の和室があり押し入れが付いている。

上段には来客用の和式布団が2組と夏用の掛け布団やシーツの代えがあるのだが、ちょうど下段のスペースが空いてるから持って行けるならそこに入れといてくれと先生から言われていた。


無理はするなというコトも合わせて言われてはいたのだが、ダンボールをリビングに置きっぱなしにしていては片付けたというには中途半端。

重いには重いだろうが出来ないコトじゃない。




「よっこらせっと!!」



と、一種の気合い入れをしながらダンボールを1箱両手に持って抱え上げる。

この声掛け。私は結構無意識に口に出してるらしく『年寄りクセぇな』って笑われる。

でも今はそのゲタゲタ笑う人は居ないから言う。

だってやっぱり言うと言わないとでは力の入り具合が若干違う気がするのだ。


そうしてえっちらおっちらと和室の押し入れまで運んでさぁラストの4箱め。

腕の袖を捲り直して気合いを入れながらリビングへと戻る。





…でもやっぱり最後には何かしらが待ち受けてるモノらしい――。








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