幸せは繋いだ手の中に
□貴方の左手。
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【restaurant Maeda】
…あ、何かココは雰囲気良さそうなお店――。
手を繋ぎながら政宗さんに連れて来られた所。
ランプのような柔らかい照明が入口のドアと看板部分に灯されていて、店先の花壇に植えられている緑の木々にもイルミネーションが飾り付けられ仄かな明かりがキラキラと点滅している。
外壁はレンガ造り。軒先にも観葉植物がたくさんぶら下がっていてどこか温かみを感じるようなカントリー風のオシャレなお店だった。
「ココな、俺のダチが手伝ってるトコなんだ。ソイツはちょっと煩ぇヤツだけど、飯は美味いモン出してくれっから。」
そう言った政宗さんは、コクンと頷いた私の手を引きながらお店のドアを押した。
「いらっしゃー…あれれー!?政宗久しぶりじゃないかー。しかもお連れさん付きなんて珍しいねー。」
お店に入って直ぐのカウンターからぬぅっと現れた黄色いシャツ着た大きな人。
元親先生と同じくらいの背丈があるその人は今時の男の人には珍しいポニーテールをしてて、政宗さんの後ろに隠れるようにいた私をチラリと覗き込んで見ながらニカッと愛嬌溢れる笑顔で『いらっしゃい』と言ってくれた。
私も慌てて『こ、こんばんはっ!!初めましてっ!!』と返すと一瞬驚いたような表情をされてまたニッコリとした笑みを向けられる。
「よぅ前田。奥空いてるか?」
「うん、一番奥のいつものトコが空いてるからソコ座って待ってなー。今水持ってくからー。」
「おう。…紗織、奥に行くぞ。」
「あ、はい。…ねぇ政宗さん、時々ココに来てるの?」
「Ah?まぁ、まつ姉ちゃんの飯が食いたくなったら来てっかなぁ。」
「まつ姉ちゃん?」
「さっきのヤツの伯母だよ。この店のシェフだ。」
「へぇー女性の方がシェフしてるんですか?スゴイですね。」
「中々イイ雰囲気の店だろ?」
「うん、何かアットホーム的な温かい雰囲気がありますね。」
お店の中は、家族連れや気品のある年配の女性グループ、若い男女のカップルと様々な客層で結構賑わっていて、どの席からも食事を楽しみながら談笑している声が聞こえてきていた。
この前とは大分違う。
そして私達が着いた席はそのホールからは少し隔離されたような三方向壁になっている一番奥の席。
『いつものトコ』というさっきの会話からすると、ココは政宗さんの特等席のようなカンジの席なんだろう。
ホールの賑やかさもその一角に入ってしまうとあまり聞こえない。
向かい合って座る為にポケットから手を出して繋いでいた手を解いてコートを脱ぎながら席に着く。
政宗さんと繋ぎっぱなしだった右手は手袋をしていた左手よりもずっと温かくなっていた。
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