幸せは繋いだ手の中に

□白い季節。
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「え?今日これから政宗さんとデートなの?」

「何か急にそうなったみたいなんですけど…あーどうしよう…この格好じゃ…」






――日勤を終えた後のロッカールーム。

白衣を脱ぐ前にメールチェックしようと携帯を開けば政宗さんから1通のメールが届いていた。



お付き合いが始まってからまだ1週間程しか経っていない。

それにあの日以降、夜勤が重なったり政宗さんも仕事が忙しかったコトもあり2人だけで会えたのは1度だけ。

しかも深夜勤に入る夜だった為に2時間程の僅かな時間だった。



――それでもメールのやり取りは欠かさずしている。

勤務シフトに関係なく、仕事が終わった時に携帯を開けば政宗さんからのメールが届いていて、今ではロッカールームに戻って来た途端にまず携帯を手に取るようになっていた。








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from:政宗さん
subject:迎えに行く
===========
仕事が早く終わりそうだから夕飯食いに行こうぜ。終わったら電話しろよ。
待ってるからな(●∇⌒)ノ""

ーendー








そして今日も習慣となりつつあったメールチェックをしてみたのだが少し困惑してしまった。

しかも画面の文字を読み終えた途端『…どうしよう。』という言葉がポロッと口に出てしまっていたんだろう。後ろのロッカーで着替えをしていた渚さんに『どうしたの?』と不思議そうな顔をされながら声を掛けられた。


そしてメールの内容を話しながら携帯を見せれば『あら良かったじゃない、お食事デートね♪やだ〜政宗さんて顔文字使うんだ〜何かスッゴい意外なんだけど〜♪』なんて何とも楽しそうな返事が返ってきた。


…ええ。見掛けに寄らず自分に似せたカワイイ顔文字使うんですよ。

最初は私もビックリしましたけどね。





「…で、どうして『どうしよう』なの?」

「…あの、実はこの前もお食事誘ってもらって行ったんですけどね、そりゃもうドレスコードがあるようなお店で――まぁその時は仕事帰りとかじゃなかったんで一応それなりにオシャレはしていったんですがそれでも何かギリギリなカンジだったんですよ…。」

「ど、ドレスコード!?」


「…この服じゃ思いっきりチェックされますよねぇ?」



ロッカーの中のハンガーに掛けてあった今日の朝に着てきた服。

シンプルなパフスリーブのコットンワンピにレギンス。ブーツだってムートン。どう見たってカジュアル全開な格好だ。




「えー?とっても可愛いって思うけどなぁ。政宗さんも気にしないと思うよ?それにお店はちゃんと選んでくれてるんじゃない?仕事帰りだって知ってるワケだし大丈夫よっ!!」

「そ、そうですかね…。」



その渚さんの力強い言葉に後押しされて、携帯を握り直した私はとりあえず電話をしてみるコトにした。

『終わったら電話しろ。』って書いてあったから一応。






「プルル…紗織、終わったか?


出るの早っ!!


「う、うんっ、今終わったの。政宗さん今どこ?」

「Ah?今病院前にいるぜ?」

「ぇえ!?もう来てたんですか!?ゴメンなさいっ、直ぐ着替えて行くから待っててもらっていいですかっ!!」

「ククッ、慌てなくてイイからゆっくり来い。ちゃんと待ってっから。」


プツ。




「いやーもう渚さんどうしようっ!!政宗さんもう病院前で待ってるって!!」

「あら大変、じゃあ早くお化粧直したりして急がなきゃね♪」

「ああもうどうにでもなっちゃえっ!!この格好のまま行こうっ!!」

「そうそうそのままでイイと思うよ。」







――そうして、ロッカーをガタガタ鳴らしながら急いで白衣から服へと着替えてマスクで所々落ちてしまったファンデーションを直し、淡い色の口紅を塗る。

よしっ!!と気合いを入れ直したトコで『んじゃ渚さんまた明日っ!!お疲れ様でしたーっ!!』と半ば叫び気味に声を掛けながらロッカールームを飛び出した――





声を聞いたら



早く彼に会いたくなったから――








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