幸せは繋いだ手の中に

□世界の畔(ほとり)で。
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あーでもこの状況どうしようっ!!

『普通じゃいられない』っていうのはホントだったけど、半兵衛さんヒド過ぎるっ!!

絶対どっかで見てて笑ってるっ!!




…よし。まず深呼吸しよう、とりあえず落ち着いてみよう。

そしてから少しずつ動いてみよう。







「寒ぃんだから動くなよ…」



やっぱ落ち着くなんて無理ですー!!

そしてゴメンナサイっ!!もう動きませんっ!!




グイッとますます身体を密着されて吐息が髪に触れるくらい背後から強く包みこまれてしまうと、私にはもう手立てがなくお手上げ状態。


だが暫くそのままで固まっていれば、返ってこの状況から無理に抜け出すのもオカシイような気がしてきて(“彼氏”…なのだし)、何より少し冷静になった頭と身体に戻ってくればむしろ居心地が良いモノに感じてくる。

いつからこういう状態だったのは定かではないが、ついさっきまでずっとこの状態で熟睡していたのだろうし…(というか渚さんは何処へ…?)。



それでも静かに静かに時が流れる中で5分…10分と政宗さんの腕時計を見ながらジッとしていてもまだ振り向く勇気は湧いてこないし心臓の激しい鼓動も未だ収まる気配はないけれど――。








――そして、再び寝息が後ろから聞こえ始めて少し経った頃、再び眠る事なんて不可能なくらいギンギンな精神状態が未だ継続中だった私はあるコトを思いついてしまった。


それはほとんど無意識に近いもので、…ただ単純に触れてみたいという好奇心のようなモノで――


――ふと目の前にあるその手に触れてみたくなり、モゾリと自分の右手の指先を政宗さんの手へと伸ばしてみたのだ。










…やっぱりこうして見ると男の人の手って大きいなぁ――

こんなに間近でじっくり見たのって初めてかもしれない――。



気付かれない程度に政宗さんの手を指先だけでなぞるようにそっと触れると、頭の真後ろから低く掠れた声がした。




「…さっき、悪い夢でも見たか…?一瞬鼻啜ったろ…?」

「…っ!?…、政宗さん寝てなかったの…?」

「Ah…まぁ寝てたけど、元々俺は眠りが浅いほうだしな。何かありゃ直ぐ目が覚める。」

「あ…、じゃあ起こしちゃいましたね――。」



途端に自分がしていた事がバレたのが恥ずかしくなり、触れていた手を引っ込めようとしたその直後、その手は敷き布団に押さえられ、次には政宗さんの左手の掌の中に包まれていた。




「…こうしててもいいか――?」

「…う、ん――。」






悪い夢を見た訳じゃないけれど、悲しい気持ちになったのは確かでその時のやり取りはハッキリと憶えている。

でも何故そんな気持ちになったかを説明した所で理解が得難いコトだとは分かっているし、話した所で『それは夢だ』と片付けられてしまうコトが多く、何ともやりきれない思いを何度もしてきた。



…けど、思い出せばやっぱり悲しくなり鼻の奥がツンとして思わず目をギュッと閉じた。






背中から


手のひらから伝わってくる


この温かさや


優しさは


生きているから伝わるもの――




だからそれは私を一層切なくさせていて――


その切なさは急に不安へと変わった――



そして生まれた一つの想い







私はこの人と――


離れたくない――









繋いだ右手はそのままに、グルリと身体を反転させて政宗さんの胸元に顔を埋めるようにしがみつく。

そして政宗さんはそんな私を何も言わずにギュッと強く抱きしめてくれた。



息苦しい程の強さだけれど

そこから伝わってくる優しさにすがりたくなる。

その温かさに包まれていたくなる。




そして静かに聞こえる政宗さんの心臓の鼓動と香りが私に安心感をもたらし、身体の内から鳴らす自分の鼓動が同じくらいの速さになる頃、私を再び眠りへと導いてくれた――。









∽∽アトガキ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ 政宗さんは絶対イイ匂いがすると思うO(≧∇≦)O



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