幸せは繋いだ手の中に

□世界の畔(ほとり)で。
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一瞬耳に届いたその声は今しがたまで頭に響いてた声というよりちゃんと耳から聞こえたリアルっぽい声で、布団隣にいるハズの渚さんの声とは似ても似つかない声だったような気がした。


ふと不思議に思い、重い瞼をゆっくり開けてみたのだが未だ酔いが残っているらしく視界はハッキリとしないし、布団の隙間から見た部屋の明るさからいってもまだ夜が明けて間もない時間帯のようだ。

そして今現在、布団を頭からすっぽりと被っているからひょっとすれば聞き間違いだったかもしれない。


ああ、イイ匂いがするのはコレだったのか〜、この布団カバースッゴくイイ匂いがする〜…なんて思いながらも中々覚醒してくれない意識。未だ微睡みの状態でボーッとしながらもっと深く布団の中へと潜った。





…あれ?待てよ?


半兵衛さんは『面白そうだから見に来た』って言ってたよね…

あの人があんな事を言ってたってコトは私にとってロクでもない事に違いない。



そういえばさっきの声…、政宗さんに似ている気がしたような――



…いやいや、あり得ない。

政宗さんが先に眠りに落ちるのを辛抱強く待って待って待ってから渚さんと2人でココとは別部屋のベッドへと運んだのだ――(ほぼ同時に落ちた元親先生も一緒に)。



だって政宗さんったら『今日は一緒に寝るぞ』って言うんだもの。

無理に決まってる。

寝れないに決まってる。

色んな意味で壊れてしまう。



流石にちょっとこれはマズイぞと思い、渚さんに無言の“緊急救助コール”を送ると、これまた無言で『分かった』と頷いてくれた渚さんは元親先生と政宗さんにどんどんお酒を飲ませた。『先生と政宗さんってどっちがお酒強いんですか?』なんて勝負を吹っ掛けながら。


そしてその渚さんの言葉にまんま触発されたお二方はそりゃもう凄い飲みっぷりで――そしてそのまま酔いつぶれるまで欠伸を噛み殺しながら辛抱強く待ち、私と渚さんでベッドまで運んだハズ…だ。



…と、その時モゾッと動いた掛け布団。

…と同時に、どう考えても私の手じゃない“手”が視界に突然入ってきて目の前にポスンと置かれた。


「…!?」


そこで一気に目が覚めた。





「紗織…、I want to sleep a little more…. 」

「え?…ぅえぇぇ!?」




その声はハッキリと耳元で聞こえ、そこでやっと気付いた。

最初に聞いた声は全然聞き間違いとかじゃなく正解だったのだ。

そして背中がやけに温かかった理由も同時に判明した。



…目の前に見える手首に巻かれている時計は政宗さんが着けていたモノだと記憶している。


もうこれだけで後ろを確認せずともすっかり覚醒しきった意識の中で今自分に触れてるモノを全神経を駆使して感知すれば、いくら鈍感な私と言えど、布団じゃないもう1つの存在に否応なしに気付く訳で、もう振り向いて確認しようという勇気は私にはなかった。






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