君のその手を

□19章:夢の続きを。
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――そして、一応お互いの彼女の様子を確認しなきゃ駄目だってコトで寝室を出てみたが、空瓶とかツマミとかで結構凄いコトになってた筈のリビングのコタツの上は綺麗に片付けられ、シーンと静まりかえったその場所に二人の姿は無かった。


やはり最初に予想した通り、居るとすれば寝室の隣の部屋だろうとその部屋へと歩みを進め、ドアを静かに開けて隙間から覗いて見れば、豆球だけが点いている僅かな灯りの部屋に布団が2組。

そこに彼女らは寝息を立てて眠っていた。






「…寝てんだから襲うなよ。聞きたくねぇし。」


「…襲わねぇし、聞き耳なんか立てんなよ。つーかオマエこそヤるなよな。」


「ヤらねぇよっ!!一番オマエに言われたかねぇしっ!!」





紗織には悪ぃが、俺の渚は返してもらう。

爆睡してっから事後報告になるが、変わりに危険なコイツを隣に置いてくコトを許してくれ。

けど今晩は多分“襲い”はしないだろうから。



…多分、だけどな――。






忍び足でそっと渚が寝ている側の布団の横にしゃがみ込んで掛け布団をゆっくり捲り、横向きに寝ていた渚の膝裏と首の下に腕を滑り入れてそのままヒョイと抱き上げた。




「……ン、んー?…せん、せぇ?」


「…渚、いーからそのまま寝てろよー…。」


「んー…――。」




一瞬うっすらと目を開けた渚の頭を胸元に押し付けるように抱き直し、耳元で静かに呟けば、また直ぐに瞳は閉じられ深い寝息が聞こえてきた。


そうしてから顎でクイッと空いた場所を政宗に示すと、無言でニヤリと返された上にこちらも忍び足で部屋に入り俺達が出やすいようにとドアを広く開けてくれたのだが、“さっさと行っちまえ”的な雰囲気と、僅かではあるが危険な香りが漂い始めていて、狼が羊を襲う図が自然と思い浮かんでくる。





「…じゃあな。“ちゃんと”寝ろよ――。」

「…ああ。“今度こそ”Good night――。」




それでもやっぱ俺は男だから政宗の気持ちはよーく分かる。

好きな女をギュッとしながら眠れるっつーのはこの上ない幸せだし極上の安眠に繋がるのだ。



…だから、な――紗織、



…許せよ――。






――そして部屋を出て足でドアを閉めようと振り返った時、2組の間にあった布団と布団の隙間をピッタリと合わせる政宗がチラリと視界に入った瞬間、また良心が痛む思いがしたのだが、見なかったフリをして俺はそのままドアを閉めた――。










…だってさっきの夢の続きを見てぇんだもん――。








∽∽アトガキ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

久々にコッチに戻って政宗さん話の番外編的なお話を書いてみました(*^^*)
渚さんと一緒じゃないと寝れない&寝たくない元親さんが、狼(政宗)に羊(政宗さん彼女)を生け贄にしました(笑)
その後談は政宗さんのほうで書こうと思います。

※あと、『スクラブって何?』って思った方がいたと思うのですが、病院の先生が着てる白衣って言われるようなドクターコートではなく、カラフルな色がある“アレ”のコトです。最近の医療ドラマの外科系ドクター役は大半スクラブ姿ですね。お偉い先生は白衣ですが。女性医師はボルドー系で男性医師はブルー系が多い印象があります。

勿論、元親先生はパープル系スクラブで今は冬だからスクラブの上にドクターコート着て(ボタンは閉めませんっ!!)院内を闊歩しています(笑)










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