君のその手を
□19章:夢の続きを。
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…あれ?
渚ってこんなに肩幅広かったっけ?
掴んだ肩の感触が何かいつもの感じとは違う気がして、唇を重ねる直前で動きを止めた。
…まぁイイか。
夢なんだからイチイチ気にするコトでもねぇよな。
それに渚のほうはもう目を閉じていて俺からのキスを待ってるし。
さて仕切り直しをしよう。
『渚、俺はオマエに永遠の愛を誓――』
「…紗織〜――」
…ぁあん?
何でココで政宗の声がするんだ?
つーかイイとこだったのに邪魔すんじゃねぇよ。
ほらみろ。
あーあ、ご丁寧に緞帳降りてきて終わっちまったじゃねぇか…――
スッゲェ良い夢だったの…、…にー!?
な、なんでこうなってんだーっ!?
…良い夢から覚めてみたら悪夢のような現状の中に置かれていて、まさに天国から地獄に落とされたようなその光景に一気に意識が覚醒し、ドッと冷や汗が出た。
――俺の目の前に居たのは渚ではなく政宗。
しかも俺の腕は夢の中での“肩を掴む”コト以上にしっかりと政宗の身体を抱いているという有り様。
それを目にした途端、絶句したまま反射的に政宗をベッドの下へと全力でドカッと突き&蹴り飛ばし、俺も壁側に身を避けたのだが、指先から走った悪寒は全身を巡り巡る。
『どーりで何かヘンだったんだよなぁ』と笑って受け流せるハズもなく、夢の中で感じた違和感をスルーしてしまったコトを海の底より深く深ーく後悔した。
「…っ!?痛ってぇな…!! What happned!? 」
「『何があった』じゃねぇよ!!何で俺がオマエと寝てんだ!?」
「…ha? …紗織が居ねぇ。つーかいつの間に寝てたんだ?しかもオマエと一緒なんて酷すぎねぇか…?アレ…俺、紗織にフラれたんだっけか?…あ゛ー頭痛ぇ…。」
「…俺も寝たのは全然記憶に無ぇけど、フラれてねぇから安心しろ。多分、アイツらは隣の部屋で寝てんじゃねぇか?…つーかさ、オマエが紗織と無理矢理一緒に寝ようとすっから“こんな風”になったんだろうがよっ!!」
「Ah?…だってギュッてしてぇしヤリてぇし。」
「人の家で『ヤリてぇ』とか言うなっ!!テメェには節操つーモンがねぇのかよ!?」
「ったく、小十郎みてぇにガミガミ言うなよな…。節操はちゃんと俺にもあるから安心しろ。」
「……。」
『ふわぁ…』と盛大なあくびをしながらコキコキと関節の骨を鳴らす政宗を見て、俺はこんなにも説得力が全く無い言葉を聞いたことがねぇよ…――と思った。
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