幸せは繋いだ手の中に

□真冬に咲く向日葵。
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――そう言われても、実際“その写真”が手元にあって確認した訳じゃないから記憶を呼び起こそうにもなかなか難しいモンがある。


でも、紗織が“その写真”はアルバムを開く度に見ていたと言い、『一緒に写ってるこの人は誰?』と母に尋ね、『輝おじ様の息子さんよ』と答えられからずっとそのように認識していたという。

で、そこに写ってる自分は3歳くらいで紗織自身にその時の記憶は残っていないのだが、隣に座ってた“お兄ちゃん”(多分、俺)に棒状のアイスを口に突っ込まれてる写真なんだと。






…そこまで言われても俺にも覚えがない。


紗織が3歳くらいだというのなら俺は11歳くらいか。

でもそんくらいの時にはイギリスにいて、仙台の実家に居たのは夏と冬の僅かな期間だけだったハズだ。

それに多分“その頃”は一番ひねくれてた時期だったように思う。
単純に実家に居るのが好きじゃなかった。




…なのに“その写真の俺”は笑ってんだと。

紗織の口にアイス突っ込んで。


…そんくらい小さなヤツ(3歳児)の“相手”を俺がしていたというコトだけでも信じられないのに。






「政宗さん、今からお母さんにその写真の写メ送ってもらうからっ!!」

「ha!?そこまでしなくて――「ダメダメっ!!だって政宗さん“信じてない”って顔してるもんっ!!」

「……。」



悪ぃ…やっぱ信じられねぇよ――





そうして有無を言わさず紗織は直ぐ様携帯を鞄から取り出し母に電話。

『輝おじ様の息子さんと一緒に写ってる写真をすぐに写メしてっ!!』と第一声で叫び、『今、その人が目の前に居るから』と理由を喋れば、向こうの電話口から母の声であろう驚きの声が聞こえた。



…で、そこで俺の携帯も鳴った。

パチリと携帯を開いて着信のDisplayを確認すれば俺の親父で、このtimingで電話が掛かってきたってコトは“向こう”も今一緒にいるって事だろう。


…やっぱり何だかんだ言ってもソッチは本当らしい。




「何だよ親父…。」

「政宗っ!!何でオマエが紗織といるんだっ!?」


「…別にいたってイイじゃねぇか。たまたま知り合ったんだよ。親父こそ紗織の母親と付き合ってるっつーじゃねぇか。」

「え、あー、うん。まぁ…な。」


「…でさ、俺と紗織って小っせぇ頃会った時あんのか?なんか写真があっとかなんとか言っててさぁ…今その話してたんだが俺全っ然記憶無ぇんだよなぁ…」

「え…あぁ、そういやぁあったような…。あ、待て。ちゃんとあるってよ。…お?おー、思い出したぞー。こりゃ俺が撮った写真だ。…つーか政宗、全然憶えてねぇのか?」


「…憶えてねぇ。」

「…あんなに『まーにいたん』って呼ばれてニヤついてたのになぁ…――」

「…ha?」



その親父の言葉を聞いた途端、頭ン中にポッと記憶の欠片が浮かび上がってきた。

いつか聞いた事があるような気がしたその“フレーズ”。




『まーにいたん』?




『まー』→政宗…で、

『にいたん』→お兄ちゃん…だよな…?










『まーにいたん、――も、あいちゅくーたい。』

(政宗お兄ちゃん、アイス食べたい)






『“紗織”もあいちゅくーたいっ!!』


『うわっ待て待てっ!!紗織にもやっからっ!!…ったく、食っても腹壊すんじゃねぇぞ?親父にゃ内緒な?』


『んっ!!あんがと、まーにいたんっ!!おやじにないしょーっ!!』


『わっバカ!!でけェ声だすなっ!!バレちまうだろっ!!』









お、思い出した――。






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