幸せは繋いだ手の中に
□真冬に咲く向日葵。
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ありえねぇだろ、とは思いつつも何故か胸騒ぎに近いようなモノが支配し始めていた。
人違いであってほしいような、そうでないような。
いや…“違う”から紗織だって俺の前でポロっとおじ様の名前を喋ったし、反応を気にしている様子もない。
いやいや待て。
そういやそれ以前に紗織は俺の名字をちゃんと知ってンだろうか…?
「…紗織、あのさ…俺の名字知ってるよな…?」
ちゃんと知ってりゃ紗織の言うおじ様が俺が頭に浮かんでいる人物とは別の“てるさん”だという可能性が高くなる。
「は…?政宗さんの名字、…ですか?…えーと、さっきお兄さんが『かたくらさん』だったから“かたくら”さんですよね…?」
「…NO。」
「え゛…でもさっき…、あれ?」
…『片倉』って――
そうくるか。
…逆に反対側の可能性が一気に高くなっちまったじゃねぇか。
それに小十郎が“兄設定”だったコトもすっかり頭の中から抜け落ちてた。
「…なぁ、ホントは聞きたくねぇような気がすんだが、敢えて聞く。…『おじ様』の名字って“伊達”じゃねぇよな…?違うよな…?」
「…え、『違う』もなにもなんで政宗さんが輝宗おじ様のコト知って――「NO――っ!!goddamnっ!!」えっ?嘘、何ー!?」
なんでよりによって俺の親父なんだっ!?
伊達家の分家は結構あるから伊達の姓が極端に少ないという訳じゃねぇけど、『輝“宗”』という名までハッキリ口に出されりゃもう俺の親父しかいねぇってっ!!
暗黙の了解で名前に“宗”を使うのは本家だけだっ!!
もうこうなってしまっては普段の俺の持ち味であるcoolさを保つコトなんて無理だ。
もう無理。
一通り取り乱した後は盛大な溜め息と共に頭を抱えながら項垂れるしかなかった。
言葉も出やしねぇ。
「…もしかして、もしかしたら政宗さんは輝宗おじ様の息子さん、…ですか?そういえば名前に同じ“宗”がついてるから…」
「…yes。」
もうshock。
イイんだか悪いんだかわかんねぇケドtotalで見ればshockの一言だ。
「あ…じゃあ、あのお兄ちゃんは政宗さん――?」
「ha…?『あのお兄ちゃん』…だと?」
そのふと聞こえた紗織の言葉に顔を上げれば、紗織は物凄ーくキラキラした瞳をパチパチしながら俺を見てた。
…で、ズイっと身体を前に乗り出すように俺に近付き、
「…あの…私が小さい時、輝おじ様の息子さん、っていうお兄ちゃんと一緒に撮った写真が実家にあるんですが…――。」
「…What?」
え…――
まさか――
もしかして――
…俺と紗織は初対面ではなかったのか――?
“昔”、会って、た…?
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