幸せは繋いだ手の中に

□近付きたいと思うほど。
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そうして紗織と渚が鍋や皿を片付けたり、デザートの準備をしている間は俺と政宗の二人きり。

ちょっと男同士で作戦会議でもしようか、と徳利を手にして政宗の猪口に酒を注いだ。





「おい、どうだ手応えのほうは。」

「Ah?『手応え』だと? …まずまずじゃねぇか?…でも何か掴めねぇんだよな――。」

「…だろうな。…ココだけの話だが…アイツな、男と付き合ったコト無ぇみてぇだぜ?年齢=彼氏いない歴だとよ。かなりレアだぜ?」


…そんな紗織に政宗をくっ付けようとしている俺は少しばかり罪悪感を持っているのだが。

あ、嘘。やっぱかなり罪悪感。




「わ、What!?そ、そんな話有り得ねぇだろ!?今時そんな女…」

「まぁ嘘か本当かはわかんねぇコトだが、本人曰く、『中・高と女子校だったし、大学も看護大だったからほとんど“そーいうコト”に縁がなかった』んだと。んでも男ができんのは時間の問題だと思うぜ?この前の忘年会ですっかり顔が知れちまうようなコトしてからファンが増えちまったみてぇだし。」

「『忘年会でファンが』って…オイ…、紗織は何やったんだ?」



ププッ…ウケるっ!!

おもいっきり焦りやがって!!



まぁ誰かに取られるのが時間の問題ってのはホントの事。

アレは男のみならず女も見惚れ、宴会場全体が一瞬で静まり返った程だ。





「…知りてぇか?知りてぇよな?」

「…テメェ、俺で遊ぶとは上等じゃねぇかっ!!勿体ぶらねぇで教えやがれ!!」

「ぐわっ!!テメッ!!ちゃんとオマエにも見せてやろうと思ってちゃんと言っといたぞっ!!」




…よほど気になるらしく、クワッと目を見開きながら胸ぐらを掴まれ、前後に揺さぶられたお陰で体内アルコールが均等にシェイクされた。

うげっ…何か気持ち悪ぃ…

もうコイツを煽るのはヤメとこう…

暴走しかねん。




「お、おーい紗織ー、そろそろ“アレ”やってくんねぇかー?」

「あ、ハーイ。了解でーす。んじゃデザート食べる前に一曲やらせてもらいますねー。元親先生、曲の再生をお願いしてもいーですか?あと洗面所で準備しますのでお借りしますね。」

「???『一曲』?何か歌うのか?またあの微妙な歌を歌うのか!?」

「あ?何だ『あの微妙な歌』って?歌じゃねぇぞ?そんなの比になんねぇくれえの見せてやっからまぁ飲みながら待ってろよ。準備に時間かかるからよ。」

「政宗さん、ちょっと私の特技を披露させてもらいますね。待ってる間にレアチーズ食べちゃっててください。」


















…そして約30分後。



「……っ!!」
「キャーっ!!紗織ちゃんステキっ!!」
「よっ!!藤娘っ!!」




変身を済ませて出てきた紗織。

俺と渚は一度見ているからさほど驚きはしないが、やはり目を見張ってしまうその姿。

そわそわして、ちびちびと酒を飲んだりレアチーズを『美味っ…!!』と感動しながら食って待っていた政宗に至っては目が点だ。

レアチーズをフォークごと口に入れたまま動かない。





「それではおねがいします――。」



赤い紅を差した唇でそう言いながら一礼をし、視線をスッと上げ、紗織の演目が始まった。









…だが、


上手く“事”が運ぶように――、と俺と渚が企画したこの時間は少し違う方向へと進んでしまった――。



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