幸せは繋いだ手の中に

□秘書の苦悩。
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カチャ…



…パタン







ハァ…






カチャ…



…パタン










「…政宗様…如何なされた?先程から携帯を開いては閉じ、開いては閉じ…――。」

「…Ah? …イヤ、何でもねぇよ。」

「…手元に集中なされよ。さっきから判を押す手が止まっておりまするぞ。…それから――」

「…OK,OK。」






…ヤベ。

パソコンの画面とにらめっこしてると思ってたのにしっかり見ていやがった。

deskの影で携帯開いてたのに、“開いては閉じ、開いては閉じ”なんて操作までピタリと当てるモンだから益々溜め息が出る。


ホント部屋の四隅に隠しカメラなんかがあって、あの小十郎のパソコンと直結してんじゃねぇか?って疑いたくなるくらい小十郎の目を盗んで出来るコトなんて限られていて、紗織からのメールが来ていないかチェックすんのも一苦労。


『ちゃんとやる』という意思は伝えたものの、まるで信じちゃいねぇっていうようなツラしながら俺を見てるし、一旦“小言”を言い始めるとこれまた厄介だ。





「…政宗様、新しい女性を見付けられたようですが、遊びは程々になさったほうが宜しいのでは?そろそろ人生の伴侶となるような女性を――」



ほらな。

また始まった。



「Ah?小十郎何言ってんだ?俺は“遊び”なんて気持ちは微塵も無いぜ?」



でも今日は聞き流さねぇぜ?

つーか聞き捨てならねぇな。




「は…?」

「『は?』じゃねぇよ全く…。」


真面目に答えてやったのに何なんだ。その呆気に取られたような顔は。

そんなに意外か。




「あ、あの一つ聞いても宜しいでしょうか?」

「…ったく何だよ。」




「…一体どんな方を――?」

「…普通だっつーの。」



「政宗様が普通の方を…?」

「オマエなんか失礼じゃねぇか…?普通でイイだろ。」



「どんな方ですか…?」

「だからオマエは何を知りてぇんだよっ!!俺だって紗織のコトを詳しく知ってるワケでもねぇのにっ!!名前と看護師してることぐらいしか知らねぇんだよっ!!」


「あ、まだ手は出されてないのですか…珍しい。」


「……。」




チッ…いちいちグサッとくるようなコトまで言いやがって…!!


と思いつつ言い返せない俺も俺なのだが、こういった反応からして過去の俺の立ち振る舞いは簡単には払拭できそうもない。





…だが――






「…貴方様が仕事に集中出来なくなる程、その方はさぞ魅力的で素敵な方なんでしょうね――。」


「…まぁな。当然だろ。俺の目に狂いは無ぇ。」




「…なんとっ!!それ程までに政宗様が本気だとはっ!!この小十郎、全力でサポートさせていただきます故っ!!」


「いや…サポートはまだイイからよ、ちょっと放っといてくれねぇか?アイツ奥手っぽいし、俺も“普通のサラリーマン”ってコトになってっからオマエが後ろに居りゃ変に思われちまうしな。だから今日は送り迎えも頼まねぇからオマエも今夜はゆっくり休んどけ。」



「はっ!?今日会われるのですか!?」

「今晩、元親ン家で一緒にソイツと鍋食う予定になってんだよ。だからオマエに酒を用意してもらったんだ。」


「なんとっ!!鍋とはっ!!ではこの小十郎が手塩にかけて育てた葱と白菜を是非ともお持ちくだされっ!!」


「あ、…ああ、Thanks…。」








…なんか付いて来られそうな予感がすんのは気のせいだろうか――?








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