幸せは繋いだ手の中に

□〜モドコイ〜
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コイツ、何かイイな――








渚、紗織、俺の3人で話してるウチにそう思った。

久々に稼働した俺のアンテナはやっぱり誤作動してなかったらしい。



冒頭の『す、好きなくらい座ってくださいっ!!』という紗織の可笑しなセリフにはさすがに吹いてしまったけれど、その焦ったような態度も可愛いらしいと思った。



間近で確認した顔も良し。

化粧もケバくなく色白な肌も好みといっていい。




そしてマスターが『渚と雰囲気が似てる』っていうのが頷けるくらい、のんびりとした空気の中で会話は弾む。

だがその話す言葉はコッチ方面出身のヤツが聞けば通訳が必要だと思うくらいその三人の輪の中では方言が飛び交っていて。

俺も“言葉の記憶”を思い出しながらなんとかついていけてる。



そんなこんなで最初は思いっきり警戒心丸出しで俯き加減の紗織だったけれど、渚が間に入ってくれてるコトで今は普通に笑ってくれてるし、『ずんだも笹かまも牛タンも大好きー、政宗さんも好きー?』


とかなり俺に対してfriendlyになった。



その上、『ずんだは○○のお店のが好きでね〜』『俺は△△から取り寄せてたまに食ってる』だとか『笹かまのバリエーションがどんどん進化してっけね』『俺はやっぱオーソドックスなやつと青じそが好きだ』とか『牛タンは塩で食べるのが一番美味しいがね』『しかも炭火焼きでな』などとご当地名物論議が始まり、挙げ句の果てに紗織は『jazzバージョンで』って言いながら青葉城恋唄をアカペラで歌いだした。






…何か良く分かんなかったが


…笑うなっていうほうが無理だった。







酔っていなさそうに見えても、結構酔ってんのか?っていうようなtensionでメチャクチャ楽しそうにお喋りし始めた紗織だったが、俺のグラスの中の酒が無くなるとそそくさと席を立ち、マスターのトコまで行っておかわりを持ってきてくれる気配り様。

渚のも同様に。




結構気が利くヤツだなぁ…なんて感心したのはホントにその動作が狙ったモンとかじゃなく自然で――


普段からこんなカンジなんだろうと容易に想像できた。



思わずその一連の所作をジッと見ていれば、『何か顔についてっかー?』と言わんばかりに不思議そうに首を傾げた紗織のその顔に――






何ていうか…


何というか…






…ヤベ、なんだこの自然体――

…メチャクチャ可愛いくねぇか――?



って思った。




そして今いるこの時間がもの凄く楽しく感じる。

ジワジワと笑いが込み上げてくる上にそれがずっと続くモンだからもう腹直筋はオカシクなっていた。




時計に目をやればもう合流してから早2時間。

日付が変わる時刻になろうとしてた。




そしてその“現実”に戻った途端、寂しさに襲われた。






今が本当に楽しいと思うからこそ終焉が来るのが寂しく感じるのは当然のコトだろう。



だが、それだけじゃない。






俺は紗織ともっと話をしてみたい――。




もうちょっと一緒に居たい、って思い始めていた――。







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