君のその手を

□18章:幸せへの布石。
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『…渚、話があるんだが――』







さっきまでとは違う声色でそう言われた途端、ドキッとした――。






…やっぱどころかツッコミ処があったんだろうか?


…でも結構節約はしてたつもりだし、貯金もちゃんとしてた。…ハズ。




待てよ?でもさっきは『完璧』という嬉しい誉め言葉を言ってくれたよね――。


…ということは多分この家計簿以外のコトの話なのかな――。




…とても気になる。








でも元親さんはその後、神妙な面持ちをしたまま、『あ、あのよぅ…』とか『そのよぅ…』とブツブツ言いながら頭を掻き、次に続く言葉を言えずにいる様子。


ますます私の頭のナカには“?”が浮かぶばかりで、間が空けば空くほど非常に“何を言われるの”かと緊張感が増してくる。


…こんな時に限ってテレビをつけていないモンだから周りは静寂に包まれていて一層その雰囲気は張り詰めたモノに変わっていった。






しかもこんな元親さん見たことない。


最初は視線が合っていたのに、今はあちらこちらに飛んで落ち着かない。

両手の指もクルクルと回ってる。















「あの…「お、俺と一緒に住んでくれっ!!」 …はい?」





それは当然だった。

あまりにも様子がオカシかったから『大丈夫ですか?』と手を元親さんの方へ伸ばした途端、ガシッと両手で掴まれて叫ばれた。



部屋の空気が震えるほどに。







『一緒に』?


『住んでくれ』?






「あ、あの…それって…」

「俺と一緒に住めっ!!…じゃなくて住んでくれ…」




…あの〜、同じコト言ってますが――。




「えっ…と、“ちゃんと同棲しよう”というコトですか…?」


「…そうだ。だってこうして一つのトコに居るのが圧倒的に多いのによ、2軒分の家賃と諸費用払ってんのは勿体無ぇし、今後のコトも見越せば早々にそうしたほうがイイと思うんだが…どうだ――?」


「『今後のコト』って…?」




確かに“一緒に過ごす場所”は片寄っているから、『勿体無い』と言われれば一方がかなり“勿体無い”だろう。


私自身、薄々そう思ってはいたけれど、こういう風に過ごし始めてまだ半年も経っていないから本格的な“同棲”となるのはもう少し先のコトだと思ってた――。







でも、“ドキッ”とした心臓は今はもう“ドキドキ”に変わっている。

両手に包まれた私の右手はどんどん熱くなるばかり――





…だけどその“ドキドキ”は一気に私の身体を震わすくらいの振動に変わった――。












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