君のその手を

□15章:触れるだけで伝わる“言葉”。
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ピピッと鳴った電子音。





〜“38.2℃”〜














あー…ヤベぇ。

マジでヤベぇ。




…見なきゃ良かった。









手に取った体温計には微熱とも高熱とも言えない微妙な数値が表示されてた。



…熱出したのなんて何年ぶりだ?


って思うくらい久しく熱なんて出した記憶がねぇし、こんなに身体がダルいとか節々が痛ぇとか感じたコトが無い。



…加えて、これからもっと熱が上がるな、って容易に予想できるくらい悪寒がする。















何となく午前中から前兆的な“オカシイ”感じはあったが、そんなの気にする暇もなく仕事に追われていた。



とりあえず抗生剤だけでも飲んどきゃ引けるだろう(過去にもそうやって対処してきた)と昼食後に服用し午後のopeに臨んだが、それでもやっぱりダルさは増すばかり。

今回は厄介な風邪の類いに感染しちまったのと、疲労の蓄積プラス更なる蓄積で流石の俺も抵抗力が無くなってたのかもしれない。




それでも集中力だけは途切れさせぬように気合いで乗り切った。







…だがopeが終わってその集中力と緊張感を解いてしまった途端、疲労感と同時に倦怠感が怒濤の如く押し寄せ、思わず手にして挟んでみた体温計の“数値”を認識したらそれは益々増大した。


だから“見なきゃ良かった”なんて思った。










「…科長、俺帰ってもイイっすか?」



俺と同じくope後のコーヒーをソファに座って飲んでた科長に体温計を見せた。



余計なセリフすら喋る気力もない。
コレ見せりゃ分かるだろうし。




「あ?どうした?……あー、…こりゃ微妙…つーかダメだな。早く切り上げて帰れ。後は谷先生にでも任せていけ。んで明日までには治せ。あー、点滴してから帰ったほう…あ、いや、持って帰って渚にやってもらったほうがゆっくり休めてイイんじゃねぇか?。」



「あー…、そうっすね…。そうします…。」





『明日までに治す』っつーのも今の身体の調子から言えば微妙なカンジだが、なんてったって休むワケにゃいかない。


明日も俺が執刀するopeが予定されてる。





何がなんでも“明日”には調子戻さねぇと――。







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