君のその手を

□13章:情熱の赤、冷静の青。
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「ゃ… …お… …ないで…」









まーた寝言言ってる…





今日はどんな夢見てんだ…?






物音を立てないようにベッドへと歩みを進めていた時、渚の譫言が微かに俺の耳に届いた。






彼女は割りと寝言を言う“性質”らしく、



『わー…コレおいしい…』


って言ってたり、




『えーと、プラグレンチ…レンチ…』
『あ…ラチェット取って…』


って夢の中でバイクいじってたり、




挙げ句の果てには明らかに寝てるのに、


『眠い…』


なんて言ってた時もある。









ん…?なんか…






いつも“それら”を聞く度に笑ってしまうのだが、今日のは少し様子がおかしい。





布団から見える渚の手はギュッと枕を握りしめていて、更に近付くと枕が涙で濡れて色濃くなっていた。




呼吸もみるみる荒くなっていく。





…明らかに“良い夢”なんかじゃねぇ。









「ぃや…なんで…お…て…」

「オイ…渚…」




布団を少し捲って、渚の身体を揺さぶるが、彼女はまだ目をギュッと閉じたままで、強張った身体に触れてる俺の手を懸命に払おうと頭を振りながらもがいた。




「離して…!!」


「オイ!!」






「いや…!!元親まで私を置いてく!!」





俺…?


渚を置いてく…?






「渚!!起きろ!!」












手を振り払われても、またその身体を掴んだ。




枕に爪を立て、見てられないくらい取り乱している渚。









まだ俺を見ていない。




部屋中に響く程、大声張り上げてでも早く“コッチ”に戻してやりたかった。








なんて夢を見てんだ…。





俺は今ちゃんとオマエの側に居るのに――。






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