君のその手を
□13章:情熱の赤、冷静の青。
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求め合ってイッた後、そのまま眠りに落ちてしまった渚。
スースーと寝息を立て始めた彼女に布団を静かに掛け、俺は一服をしに一旦寝室から出てリビングの換気扇の前へ向かった。
彼女の家の中でもうソコは俺の“定位置”の一つで、灰皿が置かれてある場所。
最初のうちは煙草を吸わない渚に気を使ってベランダで吸っていたのだが、以前出入りの隙にでっかい玉虫色のカナブンが部屋の明かりに誘われて乱入した事件以来、家ン中で吸わせてもらってる。
大の“虫嫌い”らしい彼女はそりゃもう大騒ぎで。しかも、
『殺さないで逃がしてください!!』
と必死な顔で慌てふためいていた渚の姿を『意外な一面を見た』と笑いながら見ていた俺に渚は結構な無理難題を押し付けた。
ブーンブーンと照明の周りを飛び回るカナブンを汗掻きながら追っかけ回して“素手”で捕まえ(渚はそれ見て思いっきり引いてた)、ポイっと外に放り投げたのだが、
『“なるべく”窓&網戸は開けないように。』
となり、この換気扇の真下が喫煙場に変更したわけで――。
あまり部屋に煙が広がらないように換気扇に向けて吸い込んだ息を吐く。
あー…“今日”もヤリすぎた…。
なんで“抑え”が効かねぇんだろな…。
吸い込まれていく煙をぼんやりと見送った。
付き合い始めてからというもの、夜勤・当直以外の時はどちらかの家で一緒に過ごしている。
というか俺が渚の家に来てるほうが確実に多い。
もうこの家の玄関に入って“彼女の匂い”がした途端、仕事の重圧からやっと解放されたと自然と息を吐けるんだ。
もうその後は本能に従う。
風呂入って――
彼女が作った飯食って――
彼女を“食らう”――。
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