君のその手を

□11章:俺の彼女を紹介します。
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「…何かオマエ…最近会わねぇウチに“顔つき”変わってねぇか…?」




「あぁん!?何言ってんだよ!?別にいつもと同じだろ…。」








久しぶりに『飲みてぇ』と誘われて来てみれば第一声がコレである。





だが『変わった』と言われたのは目の前に座っている“悪友”以外にも猿や真田にまでも言われたコト。


俺自身、自覚などしていないのだが周りが口々にそう言う。


サヤカやかすがに関しては『フフッ』と意味深な笑みを向けられた。













「…なんか毒気が抜けたな…。」



「あ゙?政宗テメェ喧嘩売ってんのかぁ!?」




医者が毒もっててどうすんだよ。

ホント失礼なヤツだ。

俺は意外と優しいんだぞ?
そりゃたまに言うこと聞かねぇムカつく患者もいるけどよ。






「…っつーかオマエは相変わらずじゃねぇか。この前、雑誌に取り上げられてたの見たぜ?」



「Ah…アレか?会社の名を売るには最高だろ!?」






ニヤリと不敵な笑みを浮かべる政宗はホント色男。


だけど相当な野心家で俺と同じ歳ながらも国内のみならず海外にまで進出を果たしている青年実業家。


この不況の中、昇り龍の如くグングン業績を上げている社長として雑誌の特集に取り上げられてた。


年収なんかは俺の何倍も稼いでるだろう。






「…で、今日は片倉サンから逃げて来たのか?」



「…まぁ…そんなモンだ…たまには羽伸ばしてぇし。」




目線を下に落とし、カランカランとグラスの中の氷を遊ばせながらグイッと飲み干した目の前に座る“この男”。




仕事を抜け出して来たのか、終わらせてから来たのかは定かではないが、ビシッとブランドもんのスーツを着こなし哀愁を漂わせている姿は絵になる。




…が。







「…オマエ…何か疲れてんな…。」



「Ah?しょうがねぇだろ…疲れてる暇なんて無ぇくらいだ…。スケジュールだって分刻みだしよ…。まぁ元親だって似たようなモンだろ…。」



「まぁな…。」






はぁ〜と同時に溜め息が出てしまう。






仕事での疲れというのもあるが、2日も渚に会ってねぇっつーのも簡単に溜め息が出てしまう原因で――。




たった“2日”。


されど“2日”。





明かりが灯されていない真っ暗な自分の家に帰るのは馴れていたハズなのに、




寂しく思えて。








物音しない静かな空間で過ごすのが好きだったのに、



落ち着かなくて。







自由に寝返りうてるようにでかいベッド買って寝心地も気に入ってたのに、






どうにも寝付きづらくて何度も寝返りをうち、浅い眠りのまま朝を迎える。



そして彼女の声じゃなく目覚まし時計の音で目が覚め、ベッドのど真ん中じゃなく、端っこで彼女用にと用意した毛布を抱き締めて眠っていたコトに気付くと、また少し寂しい思いに浸ってしまった――。







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